「8時間で250人書き写した」愛知リコール署名偽造、バイト男性は「人気案件」と証言
ぎゅうぎゅう詰めの会議室で黙々と…
不正に関わるとみられる求人が掲載されていたアルバイト情報マッチングサイトを運営する都内の企業は、BuzzFeed Newsの取材に「署名偽造に関連すると思われる求人が過去に存在していた」と認めた。 サイトに求人情報が掲載されたのは昨年10月22~24日のあいだ。「未経験者大歓迎!佐賀市で名簿の書き換え作業!!」と呼びかけており、時給900~1000円、交通費は500~1000円だった。 業務内容は「名簿の書き換え作業をお願いいたします。データをお渡しするので、それを元に修正を行っていただく」「行政からのご依頼になるので、お名前・住所・電話番号を一定期間管理させていただきます」と明示されていた。 取材に応じた20代の男性も、このサイトを通じてバイトに参加した。 「最低時給が800円もしない佐賀県では、時給900円や950円は相当な好条件。ひたすら書くだけの単純作業であれば、なおさら割がいいと感じ、応募しました。枠がすべて埋まる『人気案件』だったと思います」 「最初にこのアルバイトを口外してはいけない、と名前と住所つきの誓約書を書かされ、携帯などの私物はビニール袋に入れて一番後ろの机に置くよう指示されました」 案内された机上には、愛知県の人たちの住所の記されたA4サイズの名簿、そして高須院長や河村市長の顔写真が載っている署名紙と、ボールペンがあった。そのときはじめて、県知事リコール署名に関連した作業であると気がついた。 「リコールのため、佐賀で、しかもコロナ禍で大規模の作業をすることに違和感は覚えましたが、恥ずかしながら勉強不足で、このような作業も正式に必要なのだな、佐賀は賃金も安いからだな、と思った程度でした」
機械的な流れ作業に…
「10枠あるうちの8枠ほど、氏名と住所、生年月日を埋めるように指示されました。印鑑欄や代筆者を記す欄はそのままで良いと言われました。僕が担当したのはある市内に住む人たちで、名簿は地域ごとに並んでおり、1枚あたり30人くらいの名前や住所、生年月日が書いてあったように思います」 「同じマンションに暮らす人や、苗字が同じで家族であろうと思われる人たちの名前もありました。10~20代はあまり署名していないんだな、と感じた記憶があります」 書き終えた署名用紙と、書き損じた署名用紙を机の上に分けて置いておくように言われた。 スタッフは回収した紙を集計すると、追加の作業をするわけでもなく、そのままダンボールに入れていた。あまりにも機械的な流れ作業で、やはり違和感を覚えた。 「運営スタッフは全部で数人で、どこかの会社員のように見えましたね。僕に最初の説明をしてくれたのは30~40代の女性。他の人もですが、(九州の)方言がなかったので、愛知や東京からきた人だろうと思いました。休憩したまま2時間くらい戻らずサボっているようなアルバイトもいて、ずさんな運営だなとも感じましたね」 手の空いた時間には、運営スタッフも書き写し作業に加わった。なかには「あんた全然書いてないやん!」と怒られている人もいた。 男性は途中休憩を挟んで計8時間にわたり、約250人の氏名や住所などを書き写した。終業時間は夜9時で、派遣会社経由で申し込んだと思われる人たちは、その場で現金を受け取っていた。