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“映画の都”ロサンゼルスで映画が観られない! ドライブインシアター好調でも先行きは不透明

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リアルサウンド

 9月11日、ロサンゼルス郊外で『ノマドランド』のプレミアが行われた。おそらく、ロサンゼルス市長が外出禁止令を発出した3月19日以降初となる映画プレミアだ。会場となったのは、パサデナ市にある屋外スタジアム、ローズボウルの駐車場に特設されたドライブインシアター。夏の間はここでトライベッカ映画祭がセレクトした映画の上映が行われ、ディズニーのファンクラブ組織D23のための『スター・ウォーズ』上映や、20世紀スタジオ(旧20世紀フォックス)の新作で『X-MEN』シリーズのスピンオフ『ニュー・ミュータンツ』の上映が行われていた。プレミアで壇上に立った『ノマドランド』監督のクロエ・ジャオと主演のフランシス・マクドーマンドは、拍手と喝采の代わりに車のクラクションとライトの点滅で迎え入れられ、この一夜のために相当の覚悟と準備を重ねてきたスタッフを労った。大勢の車と人が集まり、タレントが登壇するイベントなので会場入りする車両は一台一台爆弾探知(Bomb Sweep、K9と呼ばれる警察犬による探知)が行われる。食事やトイレも50%のキャパシティを保つために管理され、警備員がパトロールし車を離れて会話をする人たちに6フィート(約180センチメートル)のソーシャル・ディスタンスの保持を促す。それでも半年ぶりに大勢で観る映画は屋外上映というシチュエーションだけでも感動的で、アメリカの大自然の中、バンに乗って路上生活するノマド(遊牧民)の物語というテーマにもぴったりあったプレミアだった。 【写真】『ノマドランド』のワールドプレミアに参加したキャスト・スタッフ  すでに映画館がフルキャパシティで営業している日本と異なり、アメリカでは映画館の再開は7割にとどまり、多くは25%~50%の観客収容率で稼働している。そして、現在も再開許可が下りていない3割には、ニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコ、シアトル、デトロイトなど大都市が含まれている。9月3日にワーナーが『TENET テネット』(クリストファー・ノーラン監督)を全米公開した際にも、これらの都市では映画を観ることができなかった。カリフォルニア州ロサンゼルスではドライブインシアターの営業のみ許可されているが、『TENET テネット』上映館にドライブインシアターは含まれず、近郊で映画を観るには片道3時間のサンディエゴ市まで出向く必要があった。その後、ワーナーはロサンゼルス近郊の5ヶ所のドライブインシアターを追加し、ロサンゼルス郡の隣に位置するオレンジ郡の映画館の再開も発表された。『TENET テネット』公開2週目の興行成績のトップ5のうち4ヶ所が新規追加館で、オレンジ郡の映画館とロサンゼルス郊外のパラマウント市にあるドライブインシアターがランクインしている。それだけポテンシャルが高い地域であるにも関わらず、屋内映画館再開の目処は立っていない。その上、カリフォルニア州では今夏の異常気象が起因した山火事による煙と灰の健康被害を憂慮し、衛生局より在宅推奨令が敷かれている。2020年は「とにかく家から出るべからず」という年になってしまったのだ。  ロサンゼルス周辺の状況で言うと、隣接するカルバーシティ市にあるソニー・ピクチャーズ本社に特設されたドライブインシアターでは、9月10日の公開から16日までセレーナ・ゴメスが製作総指揮を務める新作映画『The Broken Hearts Gallery(原題)』が上映されている。それ以降のラインナップには、ちょうどNetflixで続編のドラマシリーズ『コブラ会』が配信されたタイミングの『ベスト・キッド』(1984年)、『RENT』(2005年)、『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018年)『AKIRA 4Kリマスター版』(1988年)など過去のヒット作が並ぶ。料金は車両1台あたり35ドルで、大人4名または1家族。ロサンゼルスのダウンタウンから約20キロ離れたパラマウントにあるドライブインシアターでも、新作の『TENET テネット』『ニュー・ミュータンツ』『The Broken Hearts Gallery』の3本が公開されている(9月15日現在)。チケット代は車両料金ではなく、大人10ドル、子供4ドル。そのほかショッピングモールの駐車場に特設したドライブインシアターや、ロサンゼルスで移動型映画上映イベントを行っているStreet Food Cinemaでは過去作を上映している。いずれも好調で、ドライブインシアターで新作映画を上映しているところでは、週末はチケットが完売になることもある。  9月11日、ワーナーは10月2日に公開を予定していた『ワンダーウーマン 1984』を12月25日公開へと後ろ倒しにすることを発表。また、Variety誌の報道によると、ディズニーは11月6日公開予定の『ブラック・ウィドウ』の公開を延期、11月20日公開予定の『ソウルフル・ワールド』を『ムーラン』同様ディズニー・プラスでの配信に移行する準備があるという。映画の興行アナリストの読みでは、スタジオが高額の制作費をかけたテントポール作品(スタジオの屋台骨となる大型作品)は、主要市場であるニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコなどの映画館がフルキャパシティで開館できるまで公開を待つべきだとの見解を示している。大型作品は制作費だけでなく、宣伝・マーケティング費用に制作費と同額くらいの予算がかかることから、損益分岐点がどうしても高くなる。プレミアの翌日にヴェネチア映画祭で金獅子賞を受賞した『ノマドランド』は、派手な宣伝やマーケティングよりも、映画祭の冠と評判でじわじわと観客動員数を伸ばしていくタイプで、『TENET テネット』や『ブラック・ウィドウ」とは戦略が異なる。テントポール作品は公開館数も多いため、数ヶ月から数週間先の公開日にどれだけの都市で劇場が再開できているのか、コロナウイルスの第二波はやって来るのか、そして観客心理はどうなっているのか、周到に状況を読まなくてはならない。さらに、『ブラック・ウィドウ』公開日の11月6日、『ソウルフル・ワールド』やMGMの『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の公開日である11月20日は、大統領選直後だ。2020年のハリウッドはまだ混乱の最中で、コロナウイルス以上に11月3日の選挙以降のアメリカの状況を想定するのは難しい。 【参考】 ・https://www.natoonline.org/wp-content/uploads/2020/09/9-15-2020-NATO-COVID-19-State-Government-Relations-Report.pdf ・https://variety.com/2020/film/news/black-widow-release-date-delay-soul-disney-plus-1234769426/

平井伊都子

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