日本移住で「他人」に逆戻り 台湾の同性“ふうふ”が直面した困難「何も隠さない生活ができたら」
「同性婚」実現させた台湾 日本の現状に識者は苦言
なぜ、台湾はアジアで初めてとなる同性婚の法制化に踏み切ることができたのだろうか。台湾法に詳しい明治大学法学部の鈴木賢教授は、「多様性を尊重することが台湾のアイデンティティー」であるからだと話す。 台湾は歴史的背景から中国式の家父長制から脱却し「自由」や「平等」、「民主主義」を重んじることで中国との差別化をはかってきた。常に“政治的危機”にさらされてきたことから、国民は自分たちの手で政治を動かしていこうという意識が高い。そして、同性婚の法制化は、人権を重んじる“国”として国際的な存在感を高めるためにも重要な要素だと考えられてきたという。台湾にとっては、同性婚の法制化は“国”として生き残る手段ともいえる。 約5年半の間に同性カップルの結婚登記は1万5420組(2024年10月時点)報告されている。これは全体の結婚登記の2%程度である。 鈴木教授は、「台湾で何が起きているかを見る必要がある。このまま日本が安心して暮らせない、と人々に“選ばれない国”となれば人材の損失となり、経済的にも国益を失うことにつながるだろう」と苦言を呈した。
差別残る台湾 それでも法制化は「重要な一歩」
結婚して4年がたつハオさんとミンさんだが、台湾でも2人のこと受け入れてくれる人ばかりではない。ハオさんは、未だに父親から理解を得られていない。一方、家族には受け入れられているミンさんも、会社では同性パートナーがいるとは伝えていない。同性婚が法制化されてもなお、差別意識が急に消えてなくなった訳ではないのだ。それでも2人は台湾社会の変化を感じているという。街中でもオープンに過ごしている同性カップルを見かけるようになった。 ミンさんは、今の台湾について「法律上認められたことで、無理やり理解しつつ…みたいな雰囲気がある。でも、同性婚についてこれまで知らない、わからないからと言って恐れていた人もだんだんと変わってきていて、対話をしようという雰囲気が感じられる」と期待を込めた。