日本移住で「他人」に逆戻り 台湾の同性“ふうふ”が直面した困難「何も隠さない生活ができたら」
日本で”他人”に逆戻り 困難の連続
台湾で「普通」の結婚生活を続けていた2人だったが、ある日ミンさんが仕事の都合で日本に移り住むことになった。日本では同性婚が認められていない。日本の制度はわからないし、相談できる相手もいない。「知らない人たちにカミングアウトできるんだろうか」と日本の暮らしに様々な不安を覚えたという。 しかしハオさんは台湾での仕事を辞め、ミンさんと一緒に日本に来ることを決断した。「ただ一緒に暮らしたい、それが一番の理由。愛する人のためならどんな困難も乗り越え、お互いを支え合うはずです」と、ハオさんはいう。 予期した通り2人にとって日本での生活は困難の連続だった。最も大きな心配事は在留資格だ。日本政府は今、法律上同性の人たちについて、たとえ母国で婚姻関係を結んでいても男女の夫婦には発行される「家族滞在ビザ」を与えていない。ただし、2人がどちらも同性婚ができる国や地域の出身で、一方が仕事などの理由で日本に滞在する場合は、そのパートナーには「特定活動ビザ」で入国を許可している。法制度のない日本では、2人は法律上の「他人」に戻されてしまうのだ。
ハオさんの場合は、まずは日本語学校に入学し、留学生として来日した。しかし、卒業してしまうとビザが切れてしまう。今後のために特定活動ビザへの切り替えを申請したが、半年ほど時間がかかる。書類の中には「付き合ったのはいつから?」などいくつかのプライバシーに踏み込む質問があるほか、パートナーとの関係性を証明するような家族写真を何枚も提出するよう求められた。「ちょっと…拷問だと思いました。困った」ハオさんは、沈んだ表情でやるせなさを語った。 市役所でミンさんとの関係を説明する時にも苦労があった。窓口で「夫です」と説明しても、「弟ですか?」と何度も聞き返されてしまったという。書類にも『夫』と『妻』しか記入欄がなく困ってしまったと振り返る。 ある時には、2人で日本国内の旅行に出かけたが、色違いでお揃いの服を着ていたためかすれ違った人から「嫌な顔」をされたことが気になった。「台湾に比べて保守的に感じます。セクシャリティーのことを明かさずクローズにしたまま生活している人もたくさんいるでしょう」と、ミンさんは日本に暮らす同性愛者に対して胸が痛む思いだと語った。