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衝撃的過ぎる!ドキュメンタリー映画「わたしは金正男を殺していない」の迫真度

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日刊ゲンダイDIGITAL

 米軍がアルカイダ幹部を、爆薬の代わりに回転刃を搭載した“暗殺専用ミサイル”で仕留めたり、ロシアの野党指導者が何者かに毒殺されかけたり――。世界中で暗殺関連の話題が続いているが、近年最も奇妙だったのは、2017年にマレーシアのクアラルンプール国際空港で起きた金正恩の異母兄、金正男の暗殺事件だろう。  多数の防犯カメラがとらえた実行犯は、インドネシアとベトナム出身の若い女性2人組。白昼堂々、VXガスを顔面に塗り付ける大胆な犯行で、「日本のドッキリ番組の撮影だとだまされた」との彼女たちの言い訳も予想外だったことから世界中が困惑した。  あれから3年半、事件と2人のその後を追ったドキュメンタリー映画「わたしは金正男(キム・ジョンナム)を殺してない」がついに公開されるが、あまりにも事件の真相に肉薄しているということで話題になっている。その衝撃的な内容について映画批評家の前田有一氏が語る。 「当時の報道でも見たことのない別アングルからの防犯カメラ映像や2人の肉声、そして検察側が隠し通そうとした重要証人のインタビューなど、未知の情報が詰め込まれていて驚きました。2人の裁判のために準備されながら、お蔵入りを余儀なくされた幾多の弁護側証拠を、取材チームは交渉の末に入手。公開にこぎつけたそうです。こうした取材力に加え、劇映画のようにサスペンスフルな音楽など演出力も際立ちます」

「映画の神が降りてきた」

 メガホンをとったのは、「おしえて!ドクター・ルース」(19年)など豊富な経験を持つドキュメンタリー作家のライアン・ホワイト。彼は、実行犯女性が生まれた貧しい集落の生家まで訪れ、家族や親類にもカメラを向けている。さらに北朝鮮の平壌を取材したり、暗殺当日のカメラ映像を3DCG化して分析し、8人もの北朝鮮工作員の動きを暴き出すなど、さまざまな角度から事件の再構築を行う。そこから浮かび上がるのは、貧しい女性の弱みにつけこみ、最悪の搾取が行われたバックストーリーだ。 「犯行直後に彼女たちが空港から逃げた事実や、VXガスのついた手をすぐに洗いに行った映像などが支える“確信犯説”に、映画はファクトの積み重ねで真っ向から挑みます。何より驚くのは、監督は死刑確実といわれた2人の裁判の判決前の時点で製作を始めたということ。つまり結果を知る前に作り出したわけですが、映画の結末はおよそドキュメンタリーとは思えない、計算されつくしたかのような完璧なエンディングです。映画の神が降りてきたとはこのことで、背筋がゾクッとしました」(前田氏)  常識外れの暗殺事件は、あの後どうなったのか。断片的にしか知らない日本人には目の覚めるような作品だ。映画は10日から公開。

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