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「山奥ニート」のリアル#5  月1万8000円で生きていく「山奥ニート」の支出

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本がすき。

「お金はどうしてるんですか?」 これが山奥でニートしてるって言うと返ってくる質問1位。 そして、答えるのが難しい質問1位でもある。 というのも、街で暮らす人と山で暮らす僕らでは、お金の捉え方が違う。 街に住む人にとって、お金は命に等しい。 お金がなければ、人間は生きていけないと思っている。 食事をするにも、眠るにも、遊ぶにも、お金がなければできないと思っている。 ところが山に住むと、別に生きるだけなら必ずお金が要るってわけじゃないんだな、と気づく。 いざとなれば山には食べられるものがあるし、雨露をしのげる場所も見つけられるし、無料でできる遊びがたくさんある。 この認識が違うから、収入の話だけをしても納得してもらえないことが多い。 まずは、山奥ニートの支出について話そう。 1ヶ月1万8000円。 これさえあれば、この山奥で生きていける。 僕らは月にこの1人1万8000円を徴収して、それを食費、光熱費、通信費、その他すべてに充てている。 生きるだけだったら、これ以外のお金は要らない。 実際、僕はこの徴収のときくらいしか財布を使わないから、毎回どこに置いたか忘れかけていて焦る。 ただ現実には、この日本という国で暮らしていくには保険料や税金などかかるから、これよりはもう少し必要になる。 でも、収入が少なければ、保険料も税金もそれほどかからない。僕の年収は約30万円。 だから、所得税はかからないし、健康保険も月に1500円程度。かなり痛い出費だけど、なんとか年金も健康保険も納められてる。 お菓子やお酒なんかの嗜好品も個人で買うことになっているから、そういったものが好きな人は自腹だ。 それでも、多めに見積もっても月に3万円もあれば余裕を持って暮らしていける。 日本のひとり暮らしの平均支出は、総務省統計局によると月に約16万円だそうだ(2018年家計調査より)。 いったい何にそんなにお金が必要なんだろう。 内訳を見てみると、まず住居費が2万2645円となっている。 前述した通り、僕らが住んでいる小学校廃校は無料で譲ってもらったものなので、この住居費は1円もかからない。 次に、交際費。他人との付き合いのために1万4857円を毎月支払っているらしい。飲み会やそのための交通費、贈り物など社会人は大変そうだ。 山奥にいる僕らは交遊費0円。寂しくなったときは、リビングに行けば誰かがいて、くだらない話ができる。 電気代についてはみんなパソコンやゲームをよくやるからか、単身者とあまり変わらない。基本料金は人数割りされているから、多少は安くなってるとは思うけど。 水道は山から湧き水を引っ張ってるから、ほとんど無料だ。汲み上げるモーターの電気代が少しだけ必要だ。 蛇口をひねれば、天然のミネラルウォーターが出てくる。 不便な点は、大きな台風が来ると、水を汲み上げるホースが外れてしまうことだ。裏手の山に入って、ホースを直しに行かないといけない。 トイレは簡易水洗式だ。排泄物を水で流すが、下水道がないから定期的にバキュームカーを呼んで汲み取ってもらう。 住み始めたばかりのころ、ある日突然マンホールから汚物が溢れ出してきたことがある。 みんな田舎に住んだことがなかったから、汲み取ってもらわなきゃいけないことを知らなかったんだ。 大急ぎで業者を呼んだんだけど、山奥すぎるから行けるのは3日後と言われた。 その間、あたりはひどい臭いで、僕はほとんど外に出なかった。 これ以上溢れさせるわけにはいかないから、便意を催すたびに畑まで行って出していた。 今は1年に1~2回バキュームカーを呼んでいる。山奥まで来てくれるのを考えると、安すぎて業者の人に申し訳ない。 田舎は都会に比べて交通費がかかるとよく言われる。実際どうなんだろう。 僕らは共用の車として軽トラックを1台持っている。 この他に個人で車を所持している人が3人いる。 買い物はこのどれかで行く。町に用事がある人は同乗して買い物を手伝う。 町までのガソリン代は往復で800円程度だ。 山奥にひとりで暮らしていたら、これが大きな負担になるかもしれない。 僕らは15人で暮らしてるから、買い物のためのガソリン代は全員で割ることになる。だから、都会と比べて交通費が高いって感じたことはない。 そもそも、僕は1ヶ月の間山奥から一度も出ないこともよくある。 ニートには出かける用事なんてないのだ。           * 山奥で1ヶ月に徴収する1万8000円のうち、半分の9000円を食費に充てている。 単身者の月平均の食費が4万円だって? 毎日キャビアやフォアグラを食べてるんだろうか。 これと比べると、僕らがよっぽど貧しい暮らしを送ってるみたいじゃないか。 僕らの食事はすべてが自炊だ。 だから、都会の単身者よりは体にいい食事をしてるんじゃないかな、と思う。 もっとも、肉も野菜も町まで降りて、スーパーで買ったものがほとんどだ。 少しは畑をしてるけど、15人分の食材を賄うには全然足りない。 町への買い出しは、週に1回ほど。 15人が1週間食べる分の食料を、一度に買ってくる。 カート2台、カゴ山盛りの食材を毎回買っていく僕らは、店員さんからきっと飲食店の仕入れに来てると思われているだろうな。 お米は知り合いから安く譲ってもらう。 地域の人から食材をもらうこともよくある。野菜なんかは、好きに採っていっていいと言われる。遠慮してなかなか採らないでいると、逆に怒られたりする。 山菜はもらっても調理法がわからずに、腐らせてしまうこともある。 これはニートとして許されざる行為だ。無料でもらえるものは最大限に活かす。 これがニートとしての正しい道だ。 まぁあれこれ話したけど、結局のところ食費が安い一番の理由は、近くに飲食店がないから気まぐれに外食できないことだと思う。 仕事をしていたら、疲れて料理する気が起きないときもあるだろうけど、ニートには時間がある。共同生活をしていれば、自分が料理するのがだるいときも、他の人が作ったものを食べられる。 15人いるから、ひとりひとつ得意料理があれば、それを月に2度作るだけで毎日おいしいものが食べられることになる。 山奥の住人には、ここに来るまで料理をしたことがなかった人も多い。お米を初めて研いだという人もいるくらいだ。 そういう人が、山奥に来て料理をするようになっていくのを見るのが僕は好きだ。 自分で料理できるようになると、食費が安く済むだけじゃない。 僕らニートに一番不足しがちな、自信という栄養素を摂取できるんだ。 自分が作ったおかずを、みんなが我先にと食べるのを見ると、自分にも存在価値があるんだと思える。 まぁ、そんな感傷に浸ってると、いつの間にか自分の分のおかずがなくなってるんだけど。           * どうも山奥にいると、金銭感覚がおかしくなってくる。 なんせひとり暮らしの日本人の平均的な生活費に対して10分の1ほどのお金で生活している。 だから、僕らの金銭感覚は一般的な日本人とゼロがひとつ違う。 1000円のものを買うときも、1万円のものを買うときと同じように悩む。 1万円のものは10万円。100円のものを買うときだって、僕らにとっては1000円だから、気軽な出費ではない。 この価値観に慣れてしまうと、お店に行ってもすべてが高く思えてしまう。 僕らの生活費は1日600円だ。 600円のお菓子を買うことで、ニートできる期間が1日少なくなるかもしれない。そう考えると、無駄遣いできなくなる。 結果、「別にお菓子なんか買わなくてもいいや。家に帰ったらごはん食べられるんだし」となる。 ちなみに、アーリーリタイア先として人気があるタイのひとりあたりの家計支出の平均は1ヶ月2万4600円(Thailand Household Expenditure per Capita より)。 これは現地の人の生活費の平均なので、日本から移住した場合は基本的にこれより高くなるだろう。 物価の安い海外に移住するより、日本の山奥で暮らしたほうが安い。 英金融大手HSBCホールディングスが2019年に発表した「働きたい国ランキング」では、日本は33ヶ国中32位だった。 日本は働くには大変な国だ。 収入は他国と比べて多いわけじゃないのに、どんな小さな仕事にも完璧が求められる。 でも、代わりに食べ物は安い。治安もいいし、インフラも今のところ整ってる。 なにより言葉が通じるってのは便利だ。 山奥は不便だけど、海外で言葉が通じないことはそれよりずっと不便だと思う。 わからないことがあっても、誰かに聞けばいい。 働きすぎなければ、日本はいい国だと思う。

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