服があたっても痛い帯状疱疹を予防 感染症専門医の「もっと知られるべきワクチン」について詳しく聞いた
DR.Lさんによる帯状疱疹Q&A
Q1: 帯状疱疹に罹患したことがあるが、ワクチンを接種した方がいいのか? A1: はい、帯状疱疹の罹患歴にかかわらず、シングリックスの接種が推奨されています。その理由は主に以下の2点です: 1. 再発リスクの低減: 帯状疱疹は再発する可能性があり、初回発症後、約4%の方が再発を経験するというデータがあります。特に、年齢を重ねるにつれて、あるいは免疫力が低下している場合にリスクが高まります。 2. 合併症の予防: シングリックスは、帯状疱疹後神経痛(PHN)などの合併症を90%以上の確率で予防する効果があります。PHNは帯状疱疹の痛みが長期化する症状で、生活の質に大きな影響を与える可能性があります。 ワクチン接種のタイミングについては、帯状疱疹の急性期が終わり、完全に回復した後が適切です。通常は発症から1年程度経過してからの接種が推奨されますが、免疫力が低下している場合は3ヶ月後から接種可能です。 Q2: 水痘になったことが ある or ない が、ワクチンを接種した方がいいのか? A2: はい、水痘の罹患歴にかかわらず、シングリックスの接種が推奨されています。また、水痘の抗体価の確認も不要です。 シングリックスは水痘ウイルスの特定の成分(糖タンパク質E)に対する免疫を強化するため、過去に水痘に罹患したことがなくても効果があります。また、水痘に罹患したことがない成人は、将来水痘に感染した場合に重症化するリスクが高いため、ワクチン接種によって帯状疱疹と水痘の両方に対する防御を得ることができます。 Q3: ワクチンの副反応はどの程度か? A3: シングリックスの一般的な副反応とその発生率は以下の通りです: - 接種部位の疼痛(78%) - 倦怠感(45%) - 筋肉痛 (45%) - 頭痛(38%) これらの副反応は通常、数日で改善します。重篤な副反応としては、アナフィラキシー(100万回の接種あたり1~2件)やギラン・バレー症候群(GBS)(100万回の接種あたり1~3件)が報告されていますが、極めて稀です。 ▽ワクチンの違い シングリックス(不活化ワクチン): ・効果が高く、帯状疱疹の予防に90%以上の効果があります。 ・免疫力が低下している方にも使用可能です。 ・副反応として注射部位の痛みや全身症状(筋肉痛、疲労感など)が見られることがありますが、通常数日で改善します。 ・2回接種が必要です。 ・長期的な効果が期待できる(約9年間) ・高価(約3~4万円) ビケン(生ワクチン): ・帯状疱疹の発症リスクを約50%減少させます。 ・免疫力が低下している方には使用できません。 ・副反応は比較的軽度で、主に注射部位の局所反応です。 ・1回の接種で済みます。 ・効果の持続期間は約5年間と、シングリックスより短いです。 ・安価(約8000円) 価格面では確かにシングリックスの方が高額ですが、効果や適応範囲を考慮すると、多くの方にとってはシングリックスがより適している可能性があります。 ■DR.Lさんのプロフィール 総合内科専門医および感染症専門医として勤務。HIV感染症を専門とし、この分野の研究に携わる一方で、新型コロナウイルス、エムポックス、HPVなど幅広い感染症全般について情報提供を行っています。#UequalsU運動を支持し、LGBTQコミュニティのStraight Allyとして医療における平等と尊厳の擁護に尽力。最新の医学研究と臨床経験に基づいた信頼性の高い医療情報を提供することを心がけており、SNSでの啓発活動やnoteでも関連記事を執筆。日々の臨床経験と最新の研究結果に基づいて、感染症の予防と治療に関する情報提供に努めている。 (まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・太田 浩子)
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