服があたっても痛い帯状疱疹を予防 感染症専門医の「もっと知られるべきワクチン」について詳しく聞いた
帯状疱疹はワクチンで予防可能、もっと広く知ってほしい
ポストしたDR.Lさんに、お話を聞きました。 ──帯状疱疹ワクチンを受ける方はまだまだ少ないと実感されて、今回のポストを? 臨床現場では帯状疱疹の患者さんが多く、この疾患がワクチンで予防可能であることをもっと広く認識していただく必要があると強く感じています。帯状疱疹は単なる皮膚の病気ではなく、患者さんのQOL(生活の質)に大きな影響を与える可能性がある深刻な疾患です。 ──ワクチン接種をせずに帯状疱疹になられた方は、やはり受けておけば良かったとおっしゃる方が多いのですか? 帯状疱疹やその後の帯状疱疹後神経痛に苦しむ患者さんを多く診ていますが、その苦痛は想像以上に大きいものです。『ワクチンを受けておけばよかった』という声を実際によく耳にします。また、帯状疱疹罹患後も再発予防のためにワクチン接種を勧めることが重要だと考えています。 ──すでに帯状疱疹にかかっていても、また再発することがあるのですね。そして誰でもかかる可能性があると。 CDC(アメリカ疾病予防管理センター)の推奨では、帯状疱疹の罹患歴や現在の健康状態にかかわらず、50歳以上の全ての成人にワクチン接種を推奨しています。この点がもっと広く認知されるべきだと考えています。 ──ワクチンの有用性がわかったあと、そのワクチンが2種類あるというのも、みなさん迷われるところだと思います。生ワクチン「ビケン」と、不活化ワクチン「シングリックス」があり、先生は「シングリックス」をすすめられているのですね。 予防効果を比較すると、ビケンの50%に対してシングリックスは90%以上と明らかに高く、シングリックスを強く推奨します。50歳未満の方で免疫機能に問題がない場合、帯状疱疹のリスクはそれほど高くないため、50歳までシングリックス接種を待つことも一つの選択肢です。 ※予防効果の%は、New England Journal of Medicineに掲載された研究(doi: 10.1056/NEJMoa051016)に基づいています。 ──ただ、「ビケン」は1回接種で約8000円に対して、「シングリックス」は2回接種で合計約33000~44000円と、価格差が大きいです。 地域によっては助成金制度もあるので、そういった情報も活用することをお勧めします。もちろん、経済的な理由や接種回数を抑えたい場合は、ビケンも選択肢の一つとなります。 ──シングリックスは認知症のリスクも、インフルエンザワクチンと比較して23%低下する可能性があるのですね、知らなかったのでびっくりしました。(※シングリックス単独の効果は17%) 帯状疱疹ワクチンと認知症リスク低下の関連を示した研究(DOI: 10.1038/s41591-024-03201-5)がありますが、ただし、これはあくまで観察研究の結果であり、因果関係を断定するものではありません。現時点では、認知症予防をシングリックス選択の主な理由にすることは適切ではありませんが、帯状疱疹予防という主目的に加えて、潜在的な付加的利点として考慮に入れることは可能かもしれません。 ◇ ◇