人材は「育てる」のではなく「育つ」もの セプテーニグループが実践する「個別最適化教育システム」の現在地
働き方が多様化し、複雑な人材マネジメントが求められるようになった昨今、注目を集めているのが「ピープル・アナリティクス」です。最新のHRテクノロジーを活用して社員の行動データを収集・分析し、人材育成や働きがいの向上に取り組む企業が増えています。 国内でいち早くピープル・アナリティクスに取り組んできた企業の一つが、セプテーニグループ。同グループは「デジタルHR」を掲げて社員一人ひとりのデータを蓄積し、多様化する人材に適したさまざまな人事施策を行っています。 今回はその中から、人材育成の効率を最大限に高める「個別最適化教育システム」に注目。同グループで人事領域を統括する株式会社セプテーニ・ホールディングスの江崎修平さんと、事業部門側でともに人材育成に取り組むSepteni Japan株式会社 取締役の鈴木雄太さんに、お話をうかがいました。
人材は「育てる」のではなく「育つ」もの。人材育成の再定義から生まれた「育成方程式」
――貴社では、長年にわたって蓄積した人材データを人事施策に活用しています。人事領域でデータ活用を始めた背景をお聞かせください。 江崎:発端は、当社代表の佐藤光紀が、マイケル・ルイスの『マネー・ボール』を読んでインスピレーションを得たことでした。『マネー・ボール』は、メジャーリーグベースボールの球団であるオークランド・アスレチックスの取り組みを伝えた書籍です。厳しい財政状況だった球団が、「セイバーメトリクス」という統計学的手法によって強豪チームへと生まれ変わっていく様子が描かれています。 「この考え方を経営に生かせないだろうか」と、佐藤から当時の人事担当役員だった上野勇(現・代表取締役 グループ上席執行役員)に共有され、人事におけるデータ活用の検討が始まったと聞いています。 その後、実際に人事データ活用の検討が進むなかで、「人材は職場で良質な経験を重ねることで『育つ』」ものであり、それを「科学的に測定・評価する取り組みが人材育成である」と定義・概念化されたものが当社独自の「育成方程式」です。 育成方程式は、人それぞれが生まれ持った個性と取り巻く環境の相互作用が人の成長に影響を及ぼすという法則性を表現しています。この方程式を証明するために、株式会社ヒューマンロジック研究所に協力をいただきながら、実地検証を行い、精度の向上が確認できています。 2016年には、グループ全体から集積された人材データに基づいて、専属の研究員が研究活動を行う「人的資産研究所」を設立。現在に至るまで、人材採用・育成の強化に関するノウハウを蓄積しています。