本郷奏多はなぜ原作ファンから信頼される? 『テニスの王子様』から『鋼の錬金術師』まで
荒川弘原作による実写映画『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー/最後の錬成』が5月20日、6月24日に2部作連続で公開される。2017年に公開された前作より主演の山田涼介、本田翼やディーン・フジオカと共に続投するのが、エンヴィー役の本郷奏多だ。 【写真】山田涼介演じるエドワード・エルリック 本郷といえば、2021年11月から2022年4月まで放送された連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)に出演。ヒロインの相手役であり、夢と現実との狭間で苦悩する大部屋俳優の“文ちゃん”こと、文四郎を好演した。 一方、今回は主人公エドワード・エルリックの敵として立ちはだかる悪役に徹している本郷。5月16日に都内で行われた完成披露試写会に登壇した際には、原作者の荒川から「本郷さんの演技はさらに板についてきて、原作以上に悪そうでした。最近朝ドラでも拝見していたのですが、役者としてのギャップにやられてしまいました」(※1)と称賛のコメントが届く場面も。前作でも本郷が演じるエンヴィーのビジュアルが初公開されるやいなや、原作ファンから“歓喜”の声が挙がっていた。その小柄で端正な顔立ちとは裏腹に、極めて残虐なエンヴィーのイメージにぴったりだと評判だ。 作品が人気であればあるほど、賛否両論が巻き起こりやすい実写化。それでも、過去に何度も実写化作品に出演してきた本郷は原作者のみならず、原作ファンからも受け入れられてきた。理由の一つとして、透明感あふれる中性的な見た目が挙げられる。昨年30歳という節目に宣材写真を10年ぶりに変更したことが話題なっていたが、それまで誰も違和感を抱かなかったほど、その見た目は10代の頃からほとんど変わっていない。また極度の潔癖症、食事が苦手、人見知りを公言する本郷は、誰も寄せ付けないミステリアスなオーラを放っている。2.5次元、いや2次元に限りなく近い存在かもしれない。
だが、本郷が実写化作品に求められる理由はそれだけではないはずだ。2006年に公開された映画『テニスの王子様』では、挑発的で生意気なテニスの天才少年・越前リョーマを演じた本郷。あれから色んな俳優が舞台でリョーマを演じてきたが、15年以上経つ今もファンからは本郷の再演を希望する声が後を絶たない。『GANTZ』で西丈一郎を演じた際には、原作の再現度の高さが話題となり、未だに一部のファンから“西くん”の愛称で親しまれているほど。かなり辛口の批評を受けた実写版『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』でも、アルミンを演じた本郷は自身の身体能力に劣等感を抱きながらも芯の強さを感じさせる芝居で評判を得た。 毎度、多くの人が驚かされる彼の作品や演じる役に対する解像度の高さ。そこに秘められた理由が、自身のYouTubeチャンネル「本郷奏多の日常」に投稿された動画「【原作こそ至高】自分が演じたキャラの名シーンを勝手に選んでみた!」にて明かされている(※2)。もともと大の漫画好きとして知られる本郷は、“原作ファンとしての視点”を何より大事にしており、演じるキャラクターの一番魅力的な部分を表現したり、アニメの印象が強い作品の場合は声優の台詞回しなどを研究しているという。原作至上主義、それこそ本郷が実写化作品に求められる理由だ。 『鋼の錬金術師』で演じるエンヴィーも、原作では悪役でも随一の人気を誇るキャラクター。“嫉妬”を司るホムンクルス(人造人間)のエンヴィーは不気味だが、どこか哀愁も漂う。それは彼自身が人ならざる存在であることへの劣等感、そして人間への憧れを秘めているからであろう。完成披露試写会で「エンヴィーって、エドに突っかかっていくんだけれど戦闘能力が低いみたいな、憎たらしいんだけれど、どこか憎めない敵キャラというニュアンスを大切に、ちょっとした可愛らしさを意識しました」(※1)と語った本郷は、そんなエンヴィーの本質を理解している。前作で死亡した松雪泰子演じるラストに変わり、ホムンクルスのまとめ役となるエンヴィーの活躍、そして本郷の溢れ出る原作への愛を劇場で見届けてほしい。 ■参照 ※1. https://nordot.app/898914039243390976?c=388701204576175201 ※2. https://www.youtube.com/watch?v=A9O_WE94wJ0
苫とり子