<私の恩人>石田靖、迷いなくしてくれた先輩座長の言葉
大学時代は街角でテレビの生中継なんかを見つけたら、ピースしながらカメラに映りに行くような目立ちたがり性格やった人間が、人を目立たせることをやっていく。そういう役目やとアタマでは分かってても、どこか完全に消化できていない部分もあったんですけど、僕らが軸になってやっていくとなったある日、内場さんに言ってもらったんです。 「君の役回り、すなわちマワシという役割はしんどい。出てくる人全員に絡んで、その人に合ったパスを出していかなアカンし。しかも、目立たない。ただ、その分、必ず力はつく。昔、俺も花紀京師匠に言われた。『新喜劇のマワシができたら、一生食いっぱぐれすることはない』と。その意味が今はよく分かる」。 これを言われて、迷いが一切なくなりました。この言葉を内場さんから言われたことが大きかったです。「ホンマにええんかな…」とどこかで思っていた道を「ここを歩いてたら間違いない」と思って歩めるようになったというか。 というのもね、あんまりこんなん言うのはアレですけど(笑)、僕は内場さんを“ミスター新喜劇”のみならず、お芝居で笑いを取るということの日本一やと思ってます。ご自身も特にギャグだとか、強烈なキャラクターがあるわけではないけれども、ボケもマワシもできて、“間”で笑いが取れる。自分が尊敬する人からの言葉やったんで、染みわたりました。 確かに、改めて新喜劇の仕組みを考えると、つくづくそうなんですよね。いつの時代も強烈なキャラクター、ギャグを持った人がたくさんいる。そういった人をちゃんと活かしていく、ある意味“猛獣使い”みたいな人が必ず要るんです。 そして、この力というのは、新喜劇のみならず、どこの場でも実は使える力。「…鑑定団」で一般参加者の方々と絡む時も、「…ナイトスクープ」で依頼者と絡む時も、相手が話しやすいようなパスを出すことによって番組が盛り上がる。構図自体は、新喜劇のマワシと一緒なんです。自分にシュートの記録は残らないけど、結果、試合に勝つというか、おもしろいものができ上がる。“試合を作る楽しさ”ということを内場さんに教えてもらいました。 内場さんへの恩返しですか…。何でもできる方ですからね。これは難しい。今でも、絡むたびに新鮮なんですよね。出てくるリアクションが毎回違うんです。びっくりします。ま、恩返しらしい恩返しといえば、クリスマスとかにも全然興味のない内場さんに代わって、僕らがにぎやかに(内場の妻の未知)やすえさんとご飯を食べることくらいですかね。それくらいしか、僕からできることは思いつきませんわ(笑)。 ■石田靖(いしだ・やすし) 1965年12月10日生まれ。兵庫県伊丹市出身。本名・同じ。京都産業大学在学中の87年、オーディションで吉本興業入り。いきなり関西テレビ「素敵!KEI-SHU5」、MBSテレビ「4時ですよーだ」などのレギュラーに抜擢される。89年、吉本新喜劇に入団。99年には座長に就任する。2001年、東京に劇場「ルミネtheよしもと」がオープンしたことをきっかけに、ルミネ新喜劇の座長として東京吉本所属となる。朝日放送「探偵!ナイトスクープ」、テレビ東京系「開運!なんでも鑑定団」などに出演中。地方ロケなども多く、現在は新喜劇専属という立場から離れ、幅広く活動中。09年に16歳下の一般女性と結婚。12年に長男、13年に長女が誕生する。12月6、7日には、毎年恒例のイベント「石田笑店2014 石田家にサンタ参上!聖夜☆炎上!!」を開催。出演は石田のほか、内場勝則、すっちー、未知やすえ、島田珠代、バイオリニストの松尾依里香ら。 ■中西正男(なかにし・まさお) 1974年、大阪府生まれ。大学卒業後、デイリースポーツ社に入社。大阪報道部で芸能担当記者となり、演芸、宝塚歌劇団などを取材。2012年9月に同社を退社後、株式会社KOZOクリエイターズに所属し、芸能ジャーナリストに転身。現在、関西の人気番組「おはよう朝日です」などに出演中。