Yahoo!ニュース

IDでもっと便利に新規取得

ログイン

「障害者は稼がなくていい」と誰が決めた? 都内1位、つくりあげた「稼げる福祉施設」

配信

  • この記事についてツイート
  • この記事についてシェア
弁護士ドットコム

東京都武蔵野市の「チャレンジャー」(社会福祉法人武蔵野千川福祉会)は、障害者が雇用契約を結ばず働く就労継続支援B型の事業所だ。市内の知的障害者が30人働いている。 【写真】ガッチリ!稼げる現場 東京都のB型の平均工賃(2018年度)が月額1万6078円のところ、それを大幅に上回る10万2701円という実績をあげた。この数字は都のB型で1位。まさに「稼ぐことに特化した福祉施設」だ。 工賃をめぐる福祉施設の考えは様々で、「稼ぐより健康的に暮らす」ことを重視する施設もある。「チャレンジャー」はその立場も尊重しながら、「経済と福祉は一体であるべき」と信じている。(編集部・塚田賢慎) (なお、全国平均は1万6118円。一番は徳島県の2万2235円) ●10万円稼げる福祉施設 「こんにちはー!」。扉を開けて作業所に入ると、キビキビ働く人たちから大きな声の挨拶をもらった。 2019年度のチャレンジャーの平均工賃は10万5304円。今年末に発表予定の都のランキングで、上位に入ることはかたいだろう。 この高額な工賃を保障するシステムを作り上げたのが同法人常務理事でチャレンジャー所長の新堂薫さん(社会福祉士)。全国から業界関係者がノウハウを求めて視察に訪れる。 前回、利用者の工賃が月に1500円の生活介護事業所を紹介した。生活介護は、B型よりも重度の障害をもつ利用者が働いている。なので、単純比較できるわけではないが、その生活介護では葛藤しながらも、職員と利用者が話し合って「働いて収入を得ることは大事だけど、利用者も職員も健康に暮らしていく」という道を選んだ。 そんな選択もある。一方で、バリバリ働いて収入を得ることによって、障害者の生活を豊かにしようという考えもある。今回取材した「チャレンジャー」がまさにそうだ。

福祉の現場に取り入れた「生産管理の考え」

武蔵野千川福祉会では、生活介護、B型、グループホームなど10事業・17事業所を運営し、チャレンジャーを含めたB型事業所は4つ手がけてる。 稼ぐために、目をつけたのが「封入封緘(ふうかん)」。企業広告のダイレクトメールを作る作業だ。 ・工程の分解が可能 ・大掛かりな機械設備が不要 ・お客さんが変わっても、仕事の内容に大きな変化がない ・在庫を抱えることがない この要素が、B型の作業としてうまく噛み合った。利用者たちは、テーブルを数人で囲み、作業に打ち込む。テーブルの上には、天井から「1」~「8」まで大きな番号札がぶら下げられている。 数字ごとに、作業の内容が異なって、「2」では書類の方向を揃える(帳合い)作業。「5」は書類に宛先のラベルを貼る作業…。「それをあっちに持っていって」という曖昧な指示が苦手な人への配慮だという。 新堂さんが生産管理を独学で勉強して、システムを作った。ほかにも、座って作業していたのを、立ち仕事に切りかえたことも生産性の向上につながったそうだ。 「椅子に座ると、姿勢をただしましょうという指示を理解してもらうまでに時間がかかるし、作業中に寝てしまう。それがなくなりました」 法人の他の3つのB型でも、同様に封入封緘をしている。施設ごとに求められるスキルが異なり、時給も異なる(チャレンジャーが一番上)。スキルアップした利用者は上位のB型に移動する。 「前の施設ではパンを焼いてた人が、次は封入封緘ではもったいない。経験を無駄にしないために、作業を一律にしています」 DMは、作ったそばから発送されるので、在庫を抱えないというメリットもある。たとえば、ネジを作っても、売り切れず、事業所が倉庫がわりにされることがあるそうだ。チャレンジャーでも製造系の作業はやめた。 ただ、封入封緘には厳しい納期がある。慣れないうちは、利用者が帰ったあとで、職員が夜遅くまで働いたこともあり、軌道にのるまでが大変だった。

【関連記事】