ビールだったら回収騒ぎ? PC周辺機器メーカーがパッケージの誤記を気にしない理由
連載:牧ノブユキのワークアラウンド(PC・スマホの周辺機器やアクセサリーー業界の裏話をお届けします) 先日ネットで話題になったのが、限定品のビール「サッポロ 開拓使麦酒仕立て」が、ラベルの誤植を理由に発売中止を決めたニュースだ。最終的に撤回され、無事に店頭に並ぶことになったものの、「LAGER」(ラガー)を「LAGAR」と1文字誤っただけで発売を中止するという判断に、ネットには驚きの声が相次いだ。 もともと食品の中でも酒類、中でもラガービールは酒税法などの絡みで表記が特に厳しく、そのまま販売すれば他社からとがめられかねない事情もあったようだ。最終的にGoサインが出たのは、世間からの「もったいない」という声が強まったためで、要するに消費者を味方につけたことで、他社や公取が批判しにくい状況を作った、ということだろう。 さてこうした製造ミスによって、本来の仕様と異なる製品が出来上がってしまうことは、業界を問わずよくある話だ。PCの周辺機器やアクセサリーの業界も例に漏れないわけだが、こちらは製品自体が使い物にならないケースを除けば、最終的には発売に至ることがほとんどといっていい。具体的にどのようなケースがあるかをみていこう。
外注先の製造ミスが発覚して検収拒否するケース
PCの周辺機器やアクセサリーの業界で起こりうる製造ミスには、大きく分けて2つのパターンがある。一つは樹脂製品や布製品によくある、色や素材にまつわるミスだ。例えばカラーバリエーションを作るときに色の調合に失敗し、以前のロットと微妙に色が異なる製品が出来上がってしまうパターンなどがこれに当たる。2つ目を購入したユーザーからの指摘で、初めて発覚することもある。 もう一つは、ハード的に仕様書と異なる製品ができてしまうパターンだ。例えば、本体に直結しているケーブルが定められた仕様より短かったり、あるいは性能が低いパーツが混入し、周辺機器で規定のパフォーマンスが発揮できなかったりといった具合だ。メモリモジュールのように、外観だけでは性能の優劣が分かりにくい部品が混入しているときに起こりやすい。 PCの周辺機器やアクセサリーの業界はその多くが外注先に製造を委託しているので、これらは仕様通りに製造しなかった外注先のミスという扱いになる。つまりメーカー側は何の責任もなく、その場で検収を拒否するだけで済む。作り直しによって納期が遅れるという意味では損害を被るが、これも外注先のミスが発端なので、後で補償させればよい。 特にメーカーが神経質になるのは、法人に供給している製品だ。というのも、長年にわたって同じ型番のモデルを継続納品しているような場合、万一、要求仕様に満たない品が混入していることが発覚すると、過去に納入した製品までまとめて返品になったり、検査を要求されたりする可能性があるからだ。外注先がやらかしたミスで、このような事態になってはたまらない。