殺人事件の加害者は服役中の刑務所でマンガを読んでもいいのか? 「自分がマンガを読んでいる姿に疑問を持つ」という加害者からの手紙
セルフコントロールや対人スキル、社会性
水原はこうも書いてきた。 またマンガだけでなく以上のいくつかの理由により、学習や勉強、自己啓発や人格形成のための本など、自己投資の書籍類も買うのを控えていました。まったく買わないわけではないのですが、やはりある種の疑問を覚えていたのです。後ろめたさなども。 「買うのを控えていた」と過去形で書きましたが、実はこの点に関しては最近考えがいくらか変わりつつあります。 半年ほど前、オヤジ(工場担当の職員)と話しているときに「確かにお前は反省について深く考えている。けど他のことももっと深く考えなくちゃいけない(対人スキルや社会性など)。反省だけに特化していたら、たとえばふるいにかけたとき、それはきちんと残るかもしれないけど、向きと角度によっては、ストンと落ちるぞ。バランスの悪さと何かを急いている感がある」との指摘を受けました。 それについてずっと考えていました。 これまで自分の思考の前提には被害者の方がいました。先に挙げたマンガや本にしても、笑うことや喜び、幸福などにしても。そして更生についても反省の深さ、善の心が何よりも肝要と考えていました。 けれどもセルフコントロールや対人スキル、社会性などにも目を向けなければならないのかもしれません。何でもかんでも被害者の方を前提に思考するのは健全ではないのではないかと考えるようになったのです。 写真/shutterstock
---------- 藤井誠二(ふじい せいじ) 1965年愛知県生まれ。ノンフィクションライター。少年犯罪について長年にわたって取材・執筆活動をしている。著書に『人を殺してみたかった―愛知県豊川市主婦殺人事件』『少年に奪われた人生―犯罪被害者遺族の闘い』『殺された側の論理―犯罪被害者遺族が望む「罰」と「権利」』『黙秘の壁―名古屋・漫画喫茶女性従業員はなぜ死んだのか』、共著に『死刑のある国ニッポン』(森達也との対談)など多数。 ----------
藤井誠二
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