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女が男を食べて妊娠する世界……性を描く物語が映すものとは/小説『ピュア』

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女子SPA!

 早川書房「note」にて異例の20万PVを叩き出し、発売前からAmazonのSF・ホラー・ファンタジーの新着ランキングで一位になる(4/11日時点)など、今注目を集めている小野美由紀の官能SF小説集『ピュア』。 「もしも、女性が男性を食べないと妊娠できない世の中になったら?」という衝撃的な内容の表題作の他に、バラエティ豊かな「性」を綴った4篇の書き下ろしが収録されている。  気鋭の文筆家・小野美由紀が描く「女性の《今》と《性》」。儚(はかな)くもない、耽美なだけじゃない、荒々しく美しい女たちの物語だ。

妊娠の条件は、男を「食べる」こと

「ピュア」の主人公ユミは、人工惑星ユングに住むごく普通の10代。クラスメートと授業を受けて、昼休みはお喋りに夢中になり、マスカラを重ね塗りする。  しかし、彼女たちに課せられた宿命は過酷だ。女は国を守るために戦争に参加し、必ず子供を産まなければならない。  尚且(なおか)つ、妊娠の条件は、男を「食べる」こと。  冒頭で、ユミの友人・ヒトミが男にまたがり、捕食する場面が官能的に描かれる。  キレの良いリズミカルな文と、作者の一歩引いた目線によって生々しさが引き立ち、グロテスクなのに神秘的なシーンとなっている。

小説内の女は日本の母親たちに重なり、男は旧時代の女たちを彷彿させる

「ピュア」の世界では、女は男より、体力的にも立場的にも圧倒的に強い。彼女たちは、戦って、子どもを産んで、国も守らなればならない。  その姿は、働いて、子育てして、家事もこなす日本の母親たちに重なる。  社会人として、母親として、女として、万能であることを求められる現代の母親たち。惑星ユングの女たちは、その進化形なのかもしれない。  一方、地球に残された男たちは、女たちに守られながら労働し、子種を残して死ぬ。「ピュア」のスピンオフ作品「エイジ」では、捕食される側の陰鬱とした生活が、エイジという青年の視点で語られている。 「女から選ばれない男は生きているだけでお荷物扱いされ」、年長者は「残飯」と陰口を叩かれる。働いて精子を提供して死ぬだけなので、もちろん教育も受けられない。  彼らの姿は、「嫁」という名の労働力として一生を終えるしかなかった、あるいは、独身でいるだけで「いかず後家」「売れ残り」と揶揄され、蔑まれていた、そんな旧時代の女たちを彷彿させる。

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