なぜ”レジェンド”宮本恒靖氏を電撃解任したガンバ大阪は新体制初陣で浦和レッズに完敗を喫したのか?
後半は塚元こそ流れを変えようと奮闘した。しかし、FWレアンドロ・ペレイラ、MFチュ・セジョン、MFウェリントン・シウバの新戦力、そして昨シーズンのチーム得点王FWパトリックが次々と投入されながら最後まで浦和ゴールを脅かせなかった。 サッカー界では監督交代がショック療法となり、低迷していたチームが劇的に変わるケースが珍しくない。いわゆる「解任ブースト」は今シーズンのJ1でも、相馬直樹新監督の就任後にリーグ戦で4連勝を含めた6戦連続無敗をマークし、ザーゴ前監督が解任された時点で15位だった順位を6位にまで上げてきた鹿島アントラーズに見られる。 指揮を執って4年目になる宮本前監督の唐突な解任を受けて、ガンバの選手たちも責任を痛感して奮い立った。しかし、荒療治が施された効果は、残念ながら結果として現れなかった。試合前のチーム内の雰囲気を「今日から変わろう、いい流れをつかもうとみんなで話していた」と明かした倉田は、完敗を受けて努めて前向きな言葉を紡いだ。 「結果は0-3で負けているので、まだまだ自分たちの実力が足りないのかなど、いろいろなことを考えないといけない。ただ、すべてが悪かったわけではない。みんなが吹っ切れたというわけじゃないけど、攻撃した後に切り替えて、前でまたみんなで奪って、というプレーを出せていた部分もあったので、そこは引き続き積み上げていきたい」 22日の次節は連敗を5で止め、士気が上がるFC東京と敵地・味の素スタジアムで対峙する。ボール奪取からカウンターを仕掛けられるタレントがそろう相手だけに、松波監督のもとで前への意識を高めていく以上は攻守の切り替え、特に攻撃から守備へのネガティブ・トランジションの意識をさらに高めなければ大けがを負いかねない。 「準備時間が少ないなかで選手たちは前向きに取り組んでくれたし、前にかかる守備や攻撃は少し出せていたと思っている。ただ、前半で0-3にされているので、ボールの奪われ方や自陣に戻るスピードという部分を、同時進行でしっかり修正していきたい」 初陣をこう総括した松波監督の任期は新監督が決まるまで。国際大会で指揮を執った経験のある日本人を候補に急いで人選を進め、6月下旬からウズベキスタンで集中開催されるACLのグループリーグには、新体制で臨む青写真をフロントは描いている。 しかし、浦和戦で「解任ブースト」は発現されず、極度のゴール欠乏症が解消される兆しも見えず、開幕6試合目まで2失点と踏ん張ってきた守備陣にも綻びが見え始めた。創設30周年を迎えるクラブ史上でただ一度、J2へ降格を喫した2012シーズン以来の危機に直面しかけている状況で、ポジティブな要素は現時点では見つかっていない。 (文責・藤江直人/スポーツライター)