鶴岡東、41年ぶり春 初の8強へ決意新た /山形
<センバツ高校野球> 第92回選抜高校野球大会の選考委員会が24日に開かれ、鶴岡東(鶴岡市)が一般選考枠で選ばれた。鶴商学園時代の第51回大会(1979年)以来、41年ぶり2回目で、鶴岡東の校名では初となる。一足早い“春”の訪れに部員たちは歓喜し、大会での躍進を誓った。県勢の出場は第90回記念大会(2018年)の日大山形以来、2年ぶり。大会の組み合わせ抽選は3月13日に行われ、同19日に阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で開幕する。【渡辺薫、長南里香、高橋不二彦】 鶴岡市切添町の鶴岡東高校の1階職員室では午後3時すぎ、約30人の報道陣が詰め掛ける中、校長席に斎藤哲(あきら)校長が緊張した面持ちで座り、大会本部からの連絡を待った。約5分後にプルルルと電話が鳴り、選考委員会での選出が知らされると、「ありがたくお受けいたします」と笑顔で応じ、受話器を置いた。見守っていた職員約40人からは一斉に拍手が起きた。 同校はこの日、試験期間のために一般生徒はおらず、体育館で待機していた66人の野球部員に斎藤校長が選抜決定を伝えると、硬い表情だった選手からは小さく「おー」と声が上がった。続いて「おめでとう。大会でも全員野球を貫いてほしい」との激励に徐々に選手たちの表情はほころび、報道陣のカメラのシャッター音が響く中、鈴木喬(きょう)主将(2年)を胴上げして選抜出場を祝った。 鈴木主将は「出場が決まって素直にうれしい。ここで気を緩めず、万全な状態で甲子園に臨む」と語った。同校の甲子園での最高成績は昨夏などの3回戦。それ以上の好成績を目指し、「先輩たちから受け継いだ考える野球、丁寧な野球をしたい」と決意表明した。 3回戦に進んだ昨夏の甲子園メンバーで、新チームでは1番打者を務める山路将太郎選手(2年)は「うれしい気持ちがある半面、結果を残したいという気持ちもある。昨年は(甲子園で東東京代表の)関東一にサヨナラ負けし、東北大会では(決勝で宮城の)仙台育英に負けた。その悔しさを選抜でぶつけたい」と闘志を燃やした。昨夏にベンチ入りした小林三邦選手(2年)は「出場が決まり、うれしいし楽しみ。先を見ず、一戦一戦、戦いたい」と話した。 新チームで4番を務める馬場和輝選手(2年)は「昨夏の甲子園での先輩たちのように、しっかりと勝ち上がりたい」と躍進を誓い、東北大会の2試合で完封した太田陽都(はると)選手(2年)は「自分の結果よりもチームの結果にこだわりたい。ピッチャーよりもホームランを打つ選手になりたいという気持ちもある」と話した。 胴上げを固辞した佐藤俊監督(48)は表情を崩さず、「やっと正式に決まった。気を引き締めて臨みたい」と語った。41年前は甲子園で1勝しており、「今回は2勝し、鶴岡東初のベスト8を達成したい。チームが活性化することを期待している」と語った。 部員を支えてきたマネジャーも気持ちを新たにし、五十嵐健悟さん(2年)は「より良い練習ができるような環境づくりを心掛けてきた。僕たちも同じチームの一員。甲子園でも勝ちたい」、吉沢司さん(2年)は「甲子園でも変わることなくサポートに徹する」と述べた。 ◇投打に充実 高い総合力 鶴岡東は昨年、県内で公式戦無敗を誇り、秋季県大会は5年ぶりに優勝した。秋季東北大会は初戦の2回戦から3試合連続で2桁得点。同校として初めて、県勢では15年ぶりに進んだ決勝は仙台育英(宮城)に8―11で敗れたものの、最後まで接戦を演じた。4試合で打率3割6分8厘。切れ目のない打線に加え、計11犠打と堅実さも備え、投手陣も多彩で総合力の高さが光った。 学園創立は1957年。68年に鶴岡商業高校として開校し、77年に鶴商学園高校、2000年に現在の鶴岡東高校に改称した。「常に時代の先導者たれ」を建学の精神とし、「秩序」「忍耐」「努力」を校訓と定め、生徒約680人が学ぶ。 野球部は開校と同じ68年に創部。鶴商学園時代に夏2回、春1回、甲子園に出場した。鶴岡東としては夏4回出場し、昨夏は初の1大会2勝を挙げて3回戦(16強)に進んだ。専用の練習場を持ち、卒業生に2017年秋のプロ野球新人選手選択会議でソフトバンクが1位指名した吉住晴斗投手らがいる。 ◇市民に号外次々 鶴岡東の選抜出場を伝える毎日新聞の号外は「鶴岡東に春切符」の見出しが躍り、スクールカラーの緑も彩りを添え、ナインの笑顔の写真が大きく載った。JR鶴岡駅近くの鶴岡市錦町の商業施設で配られるなどし、手に取った市民らが「すごい」「やった」などと歓声を上げた。酒田市の女子大学生(22)は「昨夏以上のプレーを見せてほしい」と期待した。