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「定年男子 定年女子」に重要なのは「お金」よりも「孤独」対策

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サライ.jp

文/印南敦史 『定年男子 定年女子 45歳から始める「金持ち老後」入門!』(大江英樹、井戸美枝 著、日経ビジネス人文庫)は、2017年に日経BPから刊行された同名書を文庫化したもの。 経済コラムニストの大江英樹、社会保険労務士/ファイナンシャル・プランナーの井戸美枝、両氏による共著である。それぞれの得意分野を活かしつつ、“暮らし”と“お金”の双方から「金持ち老後」を迎えるためのノウハウを説いているわけだ。 大江氏が65歳で、井戸氏が58歳。ともに本書の冒頭部分で自身がたどってきた道を明かしている。どちらも参考になるのだが、今回はサライ世代により近いと思われる前者のケースをご紹介してみたい。 大江氏はもともと、新卒で入った証券会社に定年まで勤めた“ごく普通のサラリーマン”だったそうだ。 現役時代には多くの方と同様、老後の不安の多くはお金のことだと思っていたという。ところが実際に自分が定年退職してみた結果、老後について当たり前のようにいわれていることのなかに、「実はちょっと違うことがある」と気づかされることになった。 例えばよくいわれる、「定年退職時に3000万~4000万ないと老後は破綻する」は間違っていると分かりました。実は、私は定年退職時に預貯金がたったの150万円しかありませんでした。娘ふたりを中学校から大学まで私立に通わせ、高校時代はそれぞれアメリカとオーストラリアに留学。おそらく教育費は普通よりもかかったほうだろうと思います。そのうえ、父が商売に失敗し、その借金の肩代わりもしたため、お金は本当になかったのです。(本書「はじめに 『老後破産』は不安なあなたに」より引用) しかしそれでも、老後についてさほど心配してはいなかった。退職金や企業年金、公的年金が出るということも理由のひとつだったが、それだけではない。定年の2年前から自分で家計簿をつけ、1カ月のおおよその生活費を把握していたことも大きかったと振り返っているのだ。 そのため2019年に「2000万円問題」が取り沙汰されたときも、「なぜ、あんなことが話題になるのだろう」と不思議に思っていたのだとか。「ぜいたくはできないけれど、食べていくくらいならなんとかなる。だから定年後は一切仕事はやめて、趣味を中心に好きなことをやって残りの人生を楽しもう」と考えていたというのだ。つまり、多くのサライ世代と似た考え方だったとも言えそうだ。 ところが定年が近づくにつれ、考え方が変わってきた。 誰もが「老後は不安だ」といいますが、老後が不安なら、老後をなくせばいいのだと思いついたのです。人は働くことをやめたときから老後が始まるのだから、可能な限り働き続けたほうがいい、と考えるようになりました。(本書「はじめに 『老後破産』は不安なあなたに」より引用) そして実際に定年退職して実感したのは、リタイア後にいちばん大切なのは「きょういく」と「きょうよう」だということだった。「今日、行く(きょういく)」ところがあるか、そして「今日、用(きょうよう)」があるかが大切だということ。 つまり自分の「居場所」があるかないかが、幸せな老後を遅れるかどうかの決定的な違いになってくるということなのだろう。 俗に老後の3大不安といわれるのが「健康」「お金」「孤独」です。このなかで圧倒的に深刻な問題なのが実は「孤独」だということが、定年後に身に染みました。(本書「はじめに 『老後破産』は不安なあなたに」より引用) 健康やお金の重要性は話題にのぼることも多く、誰にでもすぐ理解できることでもある。しかし、孤独については話が別だ。なにしろ現役時代は毎日会社に行っているため、孤独に陥ることはないのである。 事実、健康やお金に対しては気をつけている人は多くても、孤独を恐れ、そのために準備をしている人は少ないはず。したがって、退職後にはことさら強い孤独感に襲われ、憂鬱な退職後の人生を送らざるを得ないということになりかねないわけだ。 それを防ぐために重要なのは、できれば40代、遅くとも50代に入ったらそのための準備を始めること。著者がこう強調するのは、先述したように退職後は働かないと決めていたため、準備が遅れたからだ。 しかも退職後に契約社員として再雇用された会社では、当然ながら仕事の決定権はなく、つらい気分を味わうことに。つまりは自分が生き生きと働ける場所ではなかったため、半年後に退社してセミナー講師として独立したのだった。 軌道に乗るまでには1年近くかかり、まったく収入がない時期もあった。しかし、定年退職後の生活には予想よりもお金がかからず、現役時代に当然のように行っていた生活習慣も見なおすことで、かなり収支は楽になったという。 その結果、講演や執筆で忙しく動きまわる日々を手に入れることができたというので、結果的にはすべてがうまくいったということだろう。 誰もが心配する老後のお金のことはもちろん、深刻な老後の孤独にどう備えるか。本書では、年金や社会保険のプロである井戸美枝さんと一緒に、自分自身の経験から考える定年男子、定年女子の暮らし方について仕事、お金、健康、家族といった内容を一つひとつお話ししていきたいと思います。(本書「はじめに 『老後破産』は不安なあなたに」より引用) 基本的な考え方に始まり、月収、病気と介護にかかるお金、45歳からやっておくべきことなど、定年男子、定年女子として安定した暮らしを維持するためのノウハウを凝縮。 経験が軸になっているだけに、話のひとつひとつが説得力を感じさせる内容になっている。肩肘張ることなく気軽に読める内容でもあるので、ぜひ手元に置いておきたいところだ。 『定年男子 定年女子 45歳から始める「金持ち老後」入門!』 大江英樹、井戸美枝 著 日経ビジネス人文庫 定価:本体800円+税 2020年4月

文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)などがある。新刊は『書評の仕事』 (ワニブックスPLUS新書)。

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