プロよりも多くの収益を上げる米大学スポーツの課題とは?
学生アスリートの労働組合が珍しくなくなる?
前述のアラバマ大学はキャンパスの近くに巨大なスタジアムを所有しており、1930年代から座席の増設が繰り返された結果、現在の観客席数は約10万2000に。スペインサッカーの強豪FCバルセロナのホームスタジアム「カンプ・ノウ」の観客席数が約9万9000。世界最大級のサッカースタジアムを超える規模のスタジアムが、日本のスポーツファンにはあまりなじみのないアメリカ南部アラバマ州に存在するのです。年間試合数が野球やバスケットボールよりも少ないアメリカンフットボールの試合は、プロでも大学スポーツでも、強豪チームの試合ではチケットの入手が困難ですが、アラバマ大学の試合でもほぼ毎試合10万人以上のファンがスタジアムに集まります。 これだけの規模になるとチケット販売だけでも、大学側は相当な収益を見込めます。これにグッズ販売やテレビの放映権料なども加わるのですが、大学スポーツの名目上、学生アスリートが手にするのは基本的に奨学金のみとなります。数億円の年俸を約束された監督が何人もいるなか、選手の人件費は年間で数百万円ほど。大学スポーツの商業化が拡大するのと比例して、経済的な待遇の改善を求める選手も少なくありません。 シカゴの名門ノースウエスタン大学のアメリカンフットボール部では部員が労働組合を組織するために行動を開始。医療保険や奨学金の額を巡って改善が要求される見通しですが、独立行政機関の全米労使委員会は3月26日に部員の行動を支持する声明を発表。近い将来、有名大学のスポーツチームに労働組合が相次いで誕生するかもしれません。 (文 / ジャーナリスト・仲野博文)