すべては一通の手紙から始まった――北欧を代表する陶芸家リサ・ラーソンが日本で愛された17年
3人のものづくりがスタート
日本限定のオリジナル陶器作品として、2007年にまず「イギー」が発売されるとたちまち話題になり、発売直後に即完売という成果を収めた。その光景に衝撃を受けたのは、当時の営業担当で、現在はトンカチの代表である勝木悠香理さん。 「日本で置物というと、誰もが気軽に買うような存在ではなく、私自身も持っていなかったのですが、リサの置物は一目惚れをして買っていく人がほとんどで目からうろこでした。そのことをリサに伝えると、陶芸家として十分なキャリアを重ねてきたリサも“自分がつくったことがないものを創作する“ということに魅力を感じてくれて、オリジナルのものづくりがスタートしました」(勝木さん) 同時に、「リサの作品はこんなに素敵なのに、ビンテージや陶器が好きな人たちにしか知られていないのがもったいない」という思いから、リサの名作をキーホルダーにすることを提案。形や大きさなど細部にこだわって商品化されると、学生の通学カバンで揺らめくキーホルダーを目にする機会が増え、リサ・ラーソンを知らなかった若い世代にもその名を広めていった。
日本で一番有名な北欧の猫「マイキー」はこうして誕生した
一緒にものづくりを進めて行く中で、初心に戻ったように創作に励み、アイデアが尽きることがなかったというリサ。2010年にはリサの提案により、グラフィックデザイナーである娘のヨハンナと初の共作となった絵本『BABY NUMBER BOOK』を出版。絵本のデザインは佐々木さんが担当し、当時まだ名前のなかったマイキーを表紙にすることに踏み切った。 「『BABY NUMBER BOOK』は、1から10までの数字と同じ数の動物たちが描かれている絵本で、リサが描いたスケッチの中に、のちのマイキーになる猫がいました。たくさんの動物がいる中でふてぶてしさが目を引き、“この子をスターにしよう”とひらめいたんです」(佐々木さん) 出版後もしばらく名なしだった“ふてぶてしい猫”は、ある日、布にプリントされることになり、リサとリサの娘・ヨハンナと一緒にスウェーデンのファブリック工場へ向かった佐々木さんと勝木さん。そこで名前の話が持ち上がり、ヨハンナの思いつきで「マイキー」と命名された。一度見ると忘れられないインパクトがあるマイキーは、北欧デザインらしい洗練されたキャラクターとして、大人の女性たちからも支持を集めた。 マイキーが一躍有名になったのは2014年。9月に松屋銀座で初となるリラ・ラーソン展が開催され、13日間で約7万人を動員する大成功を収めた。 「マイキーからリサを知った方は、展覧会を見て初めてリサが陶芸家だということを知ったというお声をたくさんいただきました。一方、リサのビンテージや陶器作品のファンだった方には、マイキーをはじめとする新しいキャラクターを知っていただけて、リサの活動を広く知ってもらういい機会になりました」(勝木さん) *** 「生まれ変わったら日本人になりたい」と言っていたリサ。日本への想いを明かした連載の第2回はこちらから。 トンカチ トンカチ直営店がリニューアルオープン! 詳細はこちら
田辺千菊