女性の自殺“8割増”の厳しい現実 放置されてきた、2つの「低賃金問題」
「Suicide claimed more Japanese lives in October than 10 months of COVID」(河合邦訳:日本で10月に自殺した人は、この10カ月間のコロナによる死者をはるかに超えた)という、衝撃的なタイトルの記事が、米CBS NEWSで報じられました(11月13日付)。 【「非正規の低賃金」と「女性の低賃金」2つの問題が背景にある】 内容は「日本はコロナ感染拡大をうまくコントロールし、死亡者数を2000人以下に抑えていたのに、なんと10月の自殺数はそれを上回る2153人だった。特に女性の自殺者が急増している」ということを伝えたものです。 日本だけでなく世界の多くの先進国で、かなり早い段階からケア労働の負担の大きい女性のメンタルヘルスが懸念されていましたが、日本では「女性の労働環境の悪さ」から、さらに女性が追い詰められていると、海外の人の“まなざし”は捉えているのです。 最新の報道によれば、10月の自殺者は2158人で、男性は前年同月比で21.3%増えたのに対し、女性は前年同月比でなんと82.6%増。年齢別では特に20代と40代で増えていることが分かりました。 人数では男性1306人、女性852人と男性が上回りますが、コロナ禍がいかに女性に厳しいものかを物語っています。
「一家の大黒柱=夫」とはいえなくなった
コロナ感染拡大が深刻化した4月頃から、パートなどの非正規で雇用されているシングルマザーたちが仕事を失い、「子供がおなかをすかせていても食べさせるものがない」「公園の水や野草で空腹を満たしている」といったショッキングな内容の相談が、NPO法人しんぐるまざあーず・ふぉーらむに寄せられていると一部メディアで報じられていました。 ご承知の通り、日本の相対的貧困率は15%以上で、日米欧主要7カ国(G7)のうち、米国に次いで2番目に高い数字です。ひとり親世帯に限ると、OECD(経済協力開発機構)加盟35カ国中、ワースト1位。特に母子家庭の貧困率は最悪で、米国36%、フランス12%、英国7%に対して 日本は58%。シングルマザーの就業率は先進国で最も高い84.5%なのに、 3人に2人が貧困というパラドクスが存在します。 しかし、こういったシングルマザーの貧困問題は深刻ですが、家計を支えているのはシングルマザーだけではありません。夫がいても、妻が家計を支えているケースは少なくありません。 例えば、2004年の夫婦共働き世帯の総収入のうち、配偶者(妻)の収入が占める割合は、総務省の「調査」では22.7%です。また、配偶者の就労収入がない世帯の割合は46.3%(1997年)から28.1%(2017年)にまで縮小する一方、配偶者の年収が130万円以上の世帯の割合は12.4%(1997年)から32.7%(2017年)に増えるなど、「一家の大黒柱=夫」とはいえないのです。 その半面、ケア労働の主たる担い手が女性であるという家族観は根深く、育児も介護も女性の仕事、学校のPTAも女性の仕事という状況は大きく変わっていません。