「箱根駅伝のサポートの選手たちは…」テクノアーク甲賀社長が〝セカンドキャリア支援〟始めた経緯
アスリートにとっては心強い〝援軍〟だ。建築・建築設備・プラント設備のエンジニア派遣を手掛ける株式会社「テクノアーク」は、トップ層以外のスポーツ選手のセカンドキャリア支援を積極的に行っている。大学卒業後も競技を続けることができる選手は一握り。ほとんどの企業は少数派のトップ層の選手をサポートするが、多数派の選手を支えたいと考える理由とは――。甲賀和生社長の思いに迫った。 甲賀社長の心を突き動かしたのは箱根駅伝だった。毎年1月2、3日に各大学から選出された10選手がタスキをつなぎ、頂点の座を争う正月の風物詩。日本列島が大いに盛り上がる一方で、甲賀社長は裏方に回る選手たちの様子が気になったという。 「(箱根駅伝に)選ばれた選手は就職先があるけど、給水とかしているサポートの選手たちは1月まで拘束されていて、就活もできないとの話を聞いた。裏方の選手でもどうしても競技を続けたい場合は、コンビニとか運送とかのアルバイトをしながら競技を続けていることを知ってびっくりした」 ハイレベルな舞台を目指す選手たちは、学生生活の全てを競技にささげる。さらにトップ層以外の選手は卒業後もアルバイトと並行して競技を続けたとしても、引退後に特出したスキルがない状態で社会に放り出されてしまう。そこで甲賀社長は「弊社で国家資格を取ってエンジニアとなれば、引退した後も仕事がある。セカンドキャリアの形成に貢献できるのでは」と一昨年秋から本格的に始動。関係者を通じて、日本トライアスロン連合へのスポンサードをスタートした。 日本でトライアスロンはマイナースポーツの部類。日本のトップ層で活躍する選手でも、セカンドキャリアに悩まされてきた。トライアスロンで五輪4大会連続出場の田山寛豪氏は「五輪に行きたいけど、お金がない、時間がないといったような選手を支えたいという甲賀社長の姿勢がトライアスロン界の中で浸透してきた。国家資格を取ることでセカンドキャリアにつながっていくし、五輪を目指したその先でも自分の力を発揮できる環境を提供してもらえる」と感謝を口にする。 現在のテクノアークはトライアスロン以外にも、バスケットボールなどの選手も競技と両立して仕事にも励んでいる。田山氏は「昔は『セカンドキャリアを考えるな』という指導者が結構多かったが、今はセカンドキャリアを考えることによって、競技生活で燃え尽きても次があると思える。それだけで競技に集中できる時間と思うし、心の余裕にもつながる」とメリットを指摘。甲賀社長の願いは日本のスポーツ界を変える大きな一歩につながるかもしれない。
中西崇太