“維新の会”衆院選予定候補者陣営の「スパイ行為」発覚は氷山の一角か?…元議員秘書の弁護士が語る「実態」と今すぐとるべき「対抗手段」
衆議院京都4区の「日本維新の会」の予定候補者の事務所スタッフが、偽名を使って同選挙区の現職議員の事務所に出入りし、ボランティアスタッフとして活動していたことが発覚した。「スパイ行為」「前代未聞」などといわれ物議を醸したが、実態はどうなのか。また、陣営の“機密”を保持するためにどのようなことが行われているのか。10月27日(日)の投票日へ向け、事実上の選挙戦が始まっており、気になるところである。 前回の衆院議員総選挙(2021年10月14日)での選挙違反の件数と内訳 「議員法務」の第一人者で、過去に国会議員秘書、市議会議員として生々しい選挙戦の現場に身を置いた経験が多数ある三葛敦志(みかつら あつし)弁護士に話を聞いた。
スパイ行為で“狙われる情報”とは?
そもそも、他陣営への「スパイ行為」で狙われる情報はどのようなものか。三葛弁護士は、一般人が想像するものとは若干異なると指摘する。 三葛弁護士:「スパイの目的は、敵対陣営の内部に入らなければ触れられない情報を得ることにあると考えられます。 たとえば、街頭演説など選挙活動のスケジュール、事務所内部の人間関係、業務の指示命令系統、誰が出入りをしているか、お金の使い方、こちらの陣営をどう意識しているか、といった情報が挙げられます。 これらは、選挙陣営の『アキレス腱』ともいうべきものです。『ヒラ』のボランティアスタッフには知らされない機密情報が多く、かなり奥まで入り込まなければ知ることができません」 支援者の名簿を見たことも報道されているが、三葛弁護士は「重要な情報ではない」とする。 三葛弁護士:「しょせんは敵対陣営の支援者の名簿です。知り得たところで、嫌がらせはともかく、相手側の支援者に働きかけてできることはほとんどありません。 『スパイ』という見地からはそれほど重要度が高くなく、発覚したときのリスクに到底見合わないものです。 このあたりは、一般的な感覚とは多少ズレがあるかもしれません」
選挙戦は「熾烈な権力闘争」
今回の「スパイ行為」について「前代未聞」などと評する意見がある。しかし、実際には、類似の行為は発覚しないだけで、これまでにも行われてきた可能性が高いという。 三葛弁護士:「今回の件は、スパイ行為を行ったとされる人が候補者の陣営で中心的な役割を担っていたとのことであり、発覚すべくして発覚したものといえます。 私自身の見聞を前提とする限り、発覚していないケースも少なくないと推察されます。 これは実際にあった話ですが、ある候補者の陣営で、街頭演説に行く先々で、必ず敵対陣営の若者たちが待ち受けて街頭演説を妨害していたことがありました。『スケジュールが全部筒抜けじゃん』と首をひねっていました。 政治は『ごっこ』や『おままごと』ではなく、熾烈(しれつ)な権力闘争です。 敵対陣営に関する情報は、選挙戦を闘ううえで、喉から手が出るほど知りたい情報です。たとえば、スパイとは言わないまでも、敵対陣営またはその賛同者によって街頭活動の写真や動画の撮影や演説の録音等は当然にされている前提です。また、その行為自体は適法なので制限できません。 そこから進んで、内情を知るためになりふり構わず『スパイ行為』まで行う陣営があっても、まったく不思議ではありません。 詳細については明かせませんが、実際に、事務所内やクルマにGPS発信機や『エアタグ』などが仕込まれていたという話もあります。カメラ、録音、超小型通信機器、位置情報確認等、いろんなツールが出てきているので、『手口』はさらに高度化しています」