台湾出身のDeNA打撃投手が侍ジャパンで大活躍「忘れられない幸せな記憶がたくさんありました」
【球界ここだけの話】日の丸の誇りを胸に戦った、ベイスターズ戦士がもう一人。日本シリーズを制したDeNAで打撃投手を務める台湾生まれの余聖傑(ユ・スンチェ)チームサポーターは、今回のプレミア12で侍ジャパンに帯同した日々を「宝物。忘れられない幸せな記憶がたくさんありました。こういう機会をいただいて、感謝の気持ちしかないです」と振り返った。 日本代表チームには毎回、NPB各球団から裏方スタッフも派遣されるのが通例となっている。今回、DeNAから派遣された余聖傑氏は本業の打撃投手はもちろん、母国での試合も組まれる今大会で井端監督から事前に台湾人との通訳の仕事も任命されていた。 福岡第一高に入学し来日するまで台湾で生活しており、台湾プロ野球(CPBL)の審判が球審を務めた強化試合(チェコ戦)では井端監督が告げる選手交代をサポートした。驚きはここから。信頼を得た指揮官から「英語も話せるか?」と問われ、以降は審判の国籍に関係なくサポートした。来日前から自分で興味を持って勉強しており、DeNAのチーム付き英語教師の平川ブライアンからも学んでいた英語が大舞台で役立った。 台湾では、試合後の記者会見にも参加した。DeNAでは広報を務めた経験もあるが、壇上に上がるのはもちろん初体験。「めちゃくちゃ緊張しました。頭真っ白でしたけど、全力で通訳させてもらいました」と台湾公用語と英語を話す通訳と連携し、井端監督や選手の思いを必死に世界のメディアに伝えた。 決勝の後、あわただしい中でも井端監督からは『ありがとう』とねぎらいの言葉をかけられた。そして、こちらも普段とは異なる環境で奮闘した打撃投手としても、日本代表メンバーが『すごくいい球を投げていて、打ちやすかった』と語っていたことをDeNAの選手を通じて聞き「やっぱりうれしかったですね」と感慨深く語った。 プロ野球選手になることを志して海を渡った。クラブチームまでプレーし、その夢はかなわなかったが、異国の地でひたむきに仕事をこなす裏方としての献身が実を結び、日本代表の力になった。「これ以上光栄なことはない。僕の野球は日本で育てられたので、日本のために戦うという気持ちでいっぱいだった」と奮闘する姿には、母国の家族、親族、友人からもたくさんの応援メッセージが届いたという。 大きな経験を経て「せっかくのチャンスだから全力で頑張ってくれと侍ジャパンに行かせてくれた球団にも感謝しています。次も選ばれるかは分からないけど、球団にいる限りはけがをせずに体のケアをしっかりして、英語力ももっと勉強してきれいな通訳ができるようにしたい」と決意を新たにした。十人十色の人生。真面目に頑張る人間に、必ず幸せは訪れる。(浜浦日向)