「専業主婦になるなら、夫の年収はいくら必要?」3つの年収ゾーンの実態とは
一見余裕そうな年収~約1,000万円
「年収1,000万円」――こう聞くと、大変高い年収であり、ゆとりのある豊かな暮らしができるだろうというイメージを抱く人はとても多いでしょう。12分割しても月額約83万円であり、一般的な物価や家賃から考慮すると、一体どこにそんなにお金を使う生活があるだろうかなどと思ってしまうほどです。しかし年収1,000万円の人たちの実際の手取り額は、実は700万円~800万円。多くの割合を税金等で引かれ、実際に暮らしや貯蓄に使える金額は意外につつましいものに。 また、国税庁長官官房企画課が令和元年9月に発表した「平成30年分民間給与実態統計調査-調査結果報告-」によれば、年収1000万円以上~を得ているのは全体の5%との結果が出ています。“専業主婦(夫)になる”ことを考えた場合、その5%の勤労者の伴侶になる人口もまた、5%程度ということに。子を持つ世帯にとっては、子育てにかかるお金の心配はもちろんのこと、夫婦二人の生活費・老後の貯蓄だけでも何かと不安な現代。自分がその5%に入るのかどうかを計算するよりは、夫婦二人で支え合う家計が安心かもしれません。
子の有無や居住地なども大いに関係!それぞれにゆとりある暮らしを目指そう
3ゾーンに分けて見てきた年収ごとの実態ですが、どのゾーンでも正直なところ、完全な専業主婦(夫)になり、家事、ひいては育児等に専念する生活を実現するのはなかなか難しいのが現状のようです。家族にとって夫婦共働きが可能な状況なのであれば、2馬力で家計を支えていくスタイルがリスクマネジメントの観点からも合理的といえそうです。 母子家庭や専業主婦の貧困に詳しい周燕飛氏が独立行政法人労働政策研究・研修機構から発表した「専業主婦世帯の貧困:その実態と要因」によると、専業主婦世帯の平均実収入(年間)および平均可処分所得は、夫婦共働き世帯に比べてそれぞれ 17.9%~19.4%も低いことが分かったそうです。標準的な4人世帯(夫婦と子2人)のみに絞って見た場合でも、専業主婦世帯と共働き世帯との収入格差は 10%以上も存在しているという厳しい結果が出ています。 もはや専業主婦は“勝ち組”の代名詞ではなく、徐々に貧困がちらついてしまうワードに変化してきてしまっているのかもしれません。夫婦のありかたも子の有無も多様になってきた令和においては、昔ながらの家族形態や男女の性差にとらわれることなく、それぞれの家族にとってゆとりのある暮らしがもてるよう、働き方も柔軟に組み合わせていくのがおすすめといえるのではないでしょうか。 【参照】 (既婚女性限定「専業主婦になるなら、夫の年収はいくら必要ですか?」 anke 国税庁企画課「令和元年分民間給与実態統計調査結果について」 総務省「家計調査報告(二人以上の世帯)-2020年(令和2年)8月分-月次結果(概要及び統計表)」 総務省「家計調査報告(二人以上の世帯)-2020年(令和2年)8月分-」 国税庁長官官房企画課「平成30年分民間給与実態統計調査-調査結果報告-」 労働政策研究・研修機構―周燕飛「専業主婦世帯の貧困:その実態と要因」
松竹 光代