保護猫と暮らす三軒茶屋の「サンチャコ」。地域と人とを結ぶ新しい暮らし方
ワーキングスペースとレンタルスペース、賃貸住宅からなる複合施設「SANCHACO(サンチャコ)」。飲食営業可能なレンタルスペースを除いて保護猫が施設内を歩き回わり、住民や地域の人々が触れ合っている光景に、思わず笑顔になる場所だ。オーナーであり、全国でまちづくりや地域活性化のプロジェクトに携わる東大史(あずま・たいし)さんの発想から実現した。保護猫を軸とした本施設を手掛けたきっかけなどを伺った。
ネコファースト! 保護猫をハブに地域コミュニティを維持
「サンチャコ」があるのは、東急田園都市線「三軒茶屋」駅から歩くこと5分ほどの、にぎやかな大通りから一本入った路地。ローカル感が色濃い東急世田谷線の「西太子堂」駅にもほど近く、のどかな雰囲気だ。
「三宿のあたりに軍の拠点が置かれた明治時代から、三軒茶屋では商店街が形成され、自動車が普及する前から市街地化していました。そのため道路幅が狭く、個性的な個人店舗が多いのが特徴です。再開発によって画一的で無個性な、人々が交流できなくなっている街が増えているなか、三軒茶屋では地域コミュニティを保てるよう、ここに代々土地を継いできた者として何ができるか考えた結果が『サンチャコ』でした」と東さん。自身が生業としてきた地域資源を活かす活動と、大好きな猫とを掛け合わせた事業を実現した。
social inclusion(ソーシャル・インクルージョン=社会的包容力)、sensuousness(センシャスネス=審美性)、sustainability(サステナビリティ=持続可能性)の3つのSをキーワードに、猫の幸せ・人の幸せ・地域コミュニティの幸せを結びつける場所にしたいと話す。
“猫の幸せ”を実現するために、「サンチャコ」では保護猫の譲渡を軸に活動を行っている。取材をした2020年10月時点で、3匹の保護猫が居住。飼い主が亡くなってしまった近隣の猫たちで、サンチャコに来るまでは近所の方がお世話をしていたそう。猫たちがサンチャコに引越してからも、その方が猫当番のひとりとしてサンチャコを訪れていて、居住者をはじめ、自然と地域交流が生まれている。