スワロフスキーが事業再編 新戦略は“手の届くラグジュアリー”
オーストリアを拠点とするクリスタルメーカーのスワロフスキー(SWAROVSKI)は、新たな成長戦略に沿った事業再編に取り組んでいる。 【画像】スワロフスキーが事業再編 新戦略は“手の届くラグジュアリー”
スワロフスキー・グループは、1895年に創業されたクリスタル事業に加えて、1919年設立の研削砥石メーカーであるチロリット(TYROLIT)と、47年に設立した双眼鏡やスコープなどを製造するスワロフスキーオプティック(SWAROVSKI OPTIK)を擁している。中核であるクリスタル事業は、クリスタルの卸をメインとするプロフェッショナル部門と、ジュエリーやウオッチ、チャームなどを販売するコンシューマーグッズ部門に分かれている。
2020年4月にスワロフスキー社の最高経営責任者(CEO)に就任したロバート・ブッフバウアー(Robert Buchbauer)は、長年にわたってコンシューマーグッズ部門のCEOを務めており、01年には売り上げ全体の25%程度だった同部門を07年にはおよそ50%に、そして現在では70%強を占めるまでに育て上げた。同氏は、「長年続いてきた事業部門別の経営を止め、一つの機能的なチームで全体を運営する“ワン・スワロフスキー”体制を目指す」と語る。
ブッフバウアーCEOは、スワロフスキーの製品は安価ではないが高価でもないという「中途半端な」ポジションにあると分析。高品質なクリスタルを製造するには高い技術と手間がかかり、「ザラ(ZARA)」や「H&M」などのファストファッションが販売するアクセサリーとの価格競争に勝つのは難しい。一方で、ラグジュアリーブランドが手掛けるファインジュエリーともジャンルが異なっている。そのため、今後はスワロフスキーのジュエリーを“手の届くラグジュアリー”と位置付け、よりクラシックでタイムレスなデザインを提供するという。
20年6月にスワロフスキーの新クリエイティブ・ディレクターに就任したジョバンナ・バッタリア・エンゲルバート(Giovanna Battaglia Engelbert)は、「私の役割は自然な進化をもたらすこと。豊かな文化的背景を持つスワロフスキーのクリエイティブ面を率いていけることを、とてもうれしく思っている」と述べた。なおスワロフスキーが全社的なクリエイティブ・ディレクター職を設けたのは、これが初めてのことだ。