民間企業が主導した、トランプ大統領「ネット追放劇」に見る“権限”とリスク
ドナルド・トランプ大統領の退任を約1週間後に控え、米国が揺れている。 この4年間、いい意味でも悪い意味でも、米国をぶっつぶしてきたトランプ大統領。最後の最後で、連邦議会の議事堂を襲撃する事件を煽ったことで、ここ4年の負の側面の全ての責任を一身に背負って退場することとなった。今後しばらくは、米国の「ミス」「問題」は全てトランプのせいにされることだろう。 【米国の保守派が集まっていたSNS「パーラー」も使用不可能に】 米国では今、議会襲撃事件によって新たな展開が起きて騒動になっている。トランプ大統領のTwitterやFacebookなどのSNSやオンラインサービスのアカウントが次々と使用禁止になったことだ。さらにアップルやグーグルも、トランプ支持の保守派たちが集まっていたSNS「Parlor(パーラー)」というアプリをダウンロードできないようにする措置に出ている。さらにパーラーのサーバをアマゾンが停止してしまう事態にもなった。 要するにトランプ大統領がオンラインから存在を消されつつある状況になっているのだ。この動きによって、米国ではSNSなどの運営企業が暴走していると大きな騒動になっている。そもそも一民間企業であるSNSなどのサービス事業者が、世界一の大国の大統領に対して口封じをする権利があるのか、と。
たびたび「警告」を受けてきたトランプ
ご存じの通り、SNSとトランプの戦いは今に始まったことではない。 もともとは、2016年の米大統領選で、ロシアなど国外からSNSを使ったフェイクニュースが拡散され、トランプ陣営に有利に働いたと取り沙汰されたことが発端だった。SNSが国際的にも情報工作に悪用されている実態が顕在化したのだ。 以降、TwitterやFacebookなどはフェイクニュースをばらまいているアカウントを削除する方針を強化してきた。投稿を制限する動きが目立つようになった。事実、米国のTwitterでは週に750万アカウントを自動的に削除していると聞く。 そしてトランプがメッセージを拡散させるためにヘビーに使っていたTwitterに関しては、20年の大統領選を前に、18年から始めた有害なツイートへの対策を強化。20年5月からトランプのツイートに「警告」をつけ、大問題になった。 その後も、トランプは、白人警察に黒人男性が殺害された事件に対して暴力を煽るようなツイートをしたり、事実とはいえないような怪しい情報を拡散させたりして、TwitterやFacebookから警告をたびたび受けてきた。 大統領選後、不正選挙を訴えるトランプの根拠のない偽情報のツイートがさらに増加したことで、Twitterが警告を出す頻度が激増(トランプ陣営は不正選挙としていくつも訴訟を起こしたがほぼ全て根拠がないと却下されている)。そこでTwitterは、世界のリーダーや政治家などの投稿は問題視しないよう大目に見ているが、トランプが大統領を退任したら彼のアカウントは削除するとしていた。 しかし1月6日に議会が襲撃され、5人の死者を出したことで流れが変わった。1月8日、トランプが議会襲撃事件を煽るなどしたことで、二度にわたってアカウントが一時凍結された。そして、Twitterは同社の方針に従い、永久にトランプのアカウントを凍結する。対するトランプは、大統領の公式アカウントなどでツイートを続けようとするも、ことごとくツイートが削除される事態になった。 トランプvs.SNSの戦いは、ここで一気に決したのであった。