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銀シャリの直らない語尾「おまえ」問題 悪癖を直すために…【お笑い界 偉人・奇人・変人伝】

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日刊ゲンダイDIGITAL

【お笑い界 偉人・奇人・変人伝】#19 「M―1グランプリ2016」でチャンピオンになった銀シャリ。NSC卒業後にコンビを結成した2人は、お揃いの青いブレザーに赤ネクタイ、黒のパンツと見た目は“古典的”ですが、芸風は日々進歩を重ねています。  結成以来、私はbaseよしもと(現・よしもと漫才劇場)で銀シャリを見てきましたが、ボケの鰻君は、セリフをかむ、忘れる、飛ばす、間違うの連続。そんな悪癖も補って余りある……“天然鰻”のキャラが魅力でもありました。入学当初、「本名か? 芸名か?」「本名です、全国でも数件しかないそうです」という会話で、「鰻」の名前は一発で覚えました。変わった名前は生まれ持った武器、中でも「鰻」はダントツにオイシイ名字で、悪癖も薄らいでしまうところがありました。  とはいえ、このままでは“ライブだけでウケる芸人”になってしまうと思い、彼らと話し合い、ツッコミの橋本君に「鰻のセリフも全部覚えて、かんだり、忘れたりしたらとことんフォローして、それを笑いに変えていこう」という戦法にしました。つまり、今までは鰻君がセリフを忘れても、橋本君は鰻君が言うまで待っていましたが、そこを待たずにツッコんでいって笑いを取ろうというわけです。ところが、どんな状況でも橋本君のフォローがある安心感からか、鰻君はネタをかむことはあっても、忘れたり飛ばしたり間違えたりすることがほとんどなくなった。たとえ間違えても、それを逆手に取って笑いに変えてしまうことで、確実にランクアップしていきました。文字通り「ピンチをチャンスに変える」対策が功を奏しました。  それでもまだ橋本君の“ツッコミ問題”が……。「違うやろ、おまえ」「なんでやねん、おまえ」という具合にどこでも“おまえ”をつける。ボケに対して「違うやろ!」「なんでやねん!」とスパッと切る方が、ボケが際立つのですが、“間があく”不安から、語尾に「おまえ」をつけてしまうのです。語尾に「おまえ」をつける癖は指摘されても口癖になってしまって、なかなか直りません。そこで、私は銀シャリのネタを見ながら「正」の字を書き、「今日は24回!」「今日は18回もおまえ言うてたで!」と注意していました。ちなみに、かまいたちの濱家君も語尾の「おまえ」がなかなか直せなかったひとりですが、あるコンビの「おまえ」だらけのツッコミを聞いて「ほんまに耳障りやわ!」と気づき、意識を高めて我慢できるようになってきました。  そんな試行錯誤を繰り返し、2016年のM―1の時には「おまえ」を挟む“間”をつくらないネタで挑み、数回は言っていましたが格段に少なくなり、明らかにツッコミの切れ味が良くなって、より笑いがくるように改善されていました。  自分たちのスタイルを持ちながら、アドバイスには真摯に対応して、腑に落ちたことは貪欲に取り入れていく。この姿勢が厳しい世界を生き残っていくには大切なポイントだと思います。いま舞台で演じている銀シャリは余裕とほどよい緊張感があって、しっかり客席を巻き込んだ笑いを取っています。 (本多正識/漫才作家)

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