【毎日書評】伝説の天才デザイナー、ココ・シャネルが残した成功を生む「3つのことば」
ココ・シャネルといえば、いわずと知れた20世紀を代表するファッションデザイナー。世界有数のブランドを創設し、女性のファッションに革命をもたらしたことで知られています。多くの人の心を惹きつけたのは、本当の美しさを貪欲に追い求める探究心と自由さ。また、独自の生き方を通じて多くの人々を魅了した人物でもあります。 1914年、第一次世界大戦の勃発により、男性は戦地に駆り出されました。 贅沢を控える空気が社会に広がると、女性にはそれまでとは違う活動的で実用的な洋服が求められるようになります。 それはまさにシャネルが目指していたものでした。シャネルは手に入る生地を使い、シンプルで活動的でありながら、着心地がよくスタイリッシュな洋服を次々と考案、デザイナーとして、実業家として成功への道を歩み始めます。 まさに19世紀的モードに終わりを告げ、20世紀という新しい時代を服装で表現したのがシャネルでした。シャネルは以後も「リトルブラックドレス」や「シャネルの5番」「マリンルック」「パンタロン」「シャネルスーツ」、さらに「ショルダーバッグ」「イミテーションジュエリー」など斬新なものを生み出していきます。(「はじめに」より) 『ココ・シャネルの言葉』(桑原晃弥 著、リベラル社)は、そんなシャネルが残した数々のことばをまとめたもの。自由と自立についての考え方、時代との向き合い方、お金の美学、時間の使い方、自分らしくあるための思想など、さまざまなカテゴリーに分けられた80種ものことばが収録されています。 きょうはそのなかから第二章「仕事に人生を賭ける」に焦点を当て、3つのことばをピックアップしてみたいと思います。
成功は自分でつかみとるもの
人は仕事によって何かを達成する。恩恵は天からは与えられなかった。自分の手で創り出したの 『シャネル、革命の秘密』(44ページより) 若いころから晩年まで、ココ・シャネルのそばには多くの男性がいました。そのため、シャネルの成功はそれらの人たちによってもたらされたと誤解する人もいるようですが、そうではないと著者は明確に否定しています。 たしかに最初の帽子店はエティエンヌ・バルサンがパリにある自分のアパルトマンの一室を提供することで実現していますし、より条件のよい場所に店を開きたいという願いはアーサー・カペルがお金を出し、銀行の補償をしてくれたことで実現しています。 女性の権利が今ほど認められておらず、起業する女性も一般的でなかった時代、店を持ち、起業するには男性の助けが必要なのはやむを得ないことでした。(45ページより) むしろ重要なのは、援助を得たか否かということではなく、「それをいかに成功へと結びつけたか」ということであるはず。事実、シャネルは自身の成功について、「成功の秘訣は、私はとても熱心に仕事をしたということ。仕事に代わるものはない。債権や度胸、運ではない」と断言しているそうです。 またシャネルは、「日曜日になにをしているのか」と聞かれた際、「日曜日が終わるのを待っている」(『ユリイカ』2021年7月号)と答えるほど働くことが好きだったようです。つまりその成功は魔法のようなものによってもたらされたわけではなく、懸命に仕事をすることでもたらされたということです。(44ページより)