コロッセオで実際に海戦は行われた? グラディエーターにまつわるウソとホント4選
企画と訓練に多くの時間が割かれていたエンターテインメントだった
古代ローマの剣闘士、グラディエーターは映画にうってつけの素材だ。皇帝や貴族が見つめるなか、屈強な男たちが恐ろしげな武器を手にコロッセオ(円形競技場)で一対一の死闘を繰り広げる。動物的本能をむき出しにして闘う剣闘士と、奢侈(しゃし)にふけり堕落した支配階級を対比させるために、剣闘士の試合は古代ローマを舞台にした物語には欠かせない。 ギャラリー:グラディエーターの真の姿、映画はウソかマコトか 写真と図版6点 しかし今、考古学的新発見によって、ローマ帝国で活躍したグラディエーターの新たな姿が浮かび上がってきた。コロッセオでの初期の発掘調査がグラディエーター研究の基礎を築き、近年はドナウ川沿いでグラディエーター養成学校の跡、ポンペイで訓練施設跡などが見つかっている。 ここから、闘技会がこれまで考えられていたよりずっと緻密なエンターテインメントであり、その舞台裏では企画と訓練に多くの時間が割かれていたことが分かった。これまでに明らかになった事実を紹介する。
1. グラディエーターは愛称で呼ばれていた?
2000年に公開された映画『グラディエーター』では、ラッセル・クロウ演じる主人公マキシマスはグラディエーターとなった後、「スペイン人」と呼ばれていた。グラディエーターを愛称で呼ぶのは、現代のプロレス界にならったようにも思えるが、その起源は古代ローマ時代にある。 歴史家によると、グラディエーターはそのひととなりによってファンや支持者に愛されていた。彼らはそれぞれ独自の「アルマトゥーラ(armatura)」と呼ばれるファイトスタイルがあり、それに合わせて固有の動きや武器を持っていたという。「トラキアのセラドゥス」はスーパースターとも呼べるグラディエーターのひとりだったが、ポンペイには彼の対戦成績や女性に人気があったことをほめたたえる落書きが残されている。
2. 死ぬまで闘ったのか、勝つまで闘ったのか?
グラディエーターが死ぬまで闘ったというのは、ポップカルチャーの影響で広まった誤解だ。実際そのような闘いはめったになかった。なかには犯罪者や捕虜もいたが、ほとんどが広大な訓練施設を備えたグラディエーター養成校で訓練を受けたプロのアスリートだった。 つまり、グラディエーターは職業であり、スターへの道だった。決して何かの罪に対する罰としてグラディエーターにされるわけではなかった。抜け目のない古代ローマのプロモーターたちが才能あるグラディエーターをむざむざと殺させてしまうはずはなく、十中八九、グラディエーターは生き残り、また別の試合に出ていたという。