幼少期の最大のミッション「10のかたまり」の感覚が養われれば、算数が得意になっていく
子どもにとって想定外の状況で突然くり出せば出すほど、瞬間的に反応できるかどうかがわかります。パッと感覚的に子どもが反応できるというところまで繰り返し繰り返し、できれば低学年の間はやってみてください。 子どもを叱った後の空気の切り替えに、「2!」とピースサインを出して見せれば、むくれたりシュンとしていた子どもの機嫌が直るきっかけになるかもしれません。偉そうに口答えをしたときに、あえてクールに仕掛けてみるのもありでしょう。子どもが油断しているときにこうした仕掛けをできるのは、親御さんの特権です。しかもお金をかけず、無限にできる、知育玩具に勝るお得な遊びです。
ブレイクスルー体験のない4年生の悲惨さ……
1年生の算数の教科書には、こうした「10の補数」の感覚を定着させるためにさまざまなアプローチがなされています。1パック10個の卵とパックに7個だけ卵が入っている写真を見せて「かずをかぞえましょう」。「12は10と□」「16は□と6」などの問題に「□にかずをかきましょう」。こんなふうに、「10のかたまり」の感覚を徹底的に学びます。 「10のかたまり」の感覚、つまり、10の補数の感覚をつかむことができて算数が得意になっていく子は、「10って便利だな」と感じています。多くの子は、「10ってなんか大事なんだな」くらいかもしれません。しかし、いずれにしてもそこで数のブレイクスルーが起こっています。 このブレイクスルーが、将来の10進法の理解へつながります。これはとても大切なことで、ブレイクスルー体験がないまま曖昧に進んできた子の場合、単位換算で大きくつまずくことが多いのです。 おどすわけではありませんが、「そもそも10の補数がちゃんとわかっていないのかな?」ということは外からは目に見えにくいため、親御さんがそのことに本当に気づくのが4年生の単位換算の頃になってしまいます。 中学受験を目指す子の場合は、2進数が出てきたときに、ラクラクついていける子とまったくわからない子にくっきり分かれます。2進法でもう一度ブレイクスルーを迎えられるかどうかが、灘中学や御三家など最難関校に合格できるかどうかの重要な分岐点です。 小学校に上がるまでに「10のかたまり」の感覚が養われていたら、学校の算数の勉強はとても楽しいものになるでしょう。そして、得意科目になる可能性も高まります。
西村則康,辻義夫