深刻なご近所経済格差…貯蓄ゼロ世帯は2割も⁉経済的豊かさの基準とは
経済的な豊かさを実感する条件とは?
年収がいくらあっても、貯蓄がきちんとできているとは限らないもの。「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯)」では、貯蓄のあるなしに加え、「経済的な豊かさを実感する条件」が示されています。その内容がこちら。 【経済的な豊かさを実感する条件】(2つまで回答可) 1位:ある程度の額の年収の実現(59.6%) 2位:ある程度の額の金融資産の保有(53.9%) 3位:消費財購入やレジャー関連消費の充実(19.7%) 4位:マイホームなどの実物資産の取得(16.8%) マイホームや消費財といった「モノの購入・所有」やレジャーといった「体験」よりも、年収や金融資産の保有など「お金の有無」を実感できるかどうかで、経済的な豊かさを実感する人が多いようです。しかし、「経済的豊かさを実感している世帯」と「実感していない世帯」ではその結果に多少の差がみられます。1位と4位で比較してみましょう。 【経済的豊かさを実感している世帯】 ある程度の額の年収の実現:54.4% マイホームなどの実物資産の取得:27.6% 【経済的豊かさを実感していない世帯】 ある程度の額の年収の実現:63.9% マイホームなどの実物資産の取得:9.3% 経済的豊かさを実感している世帯では、実物資産の取得が3割近くに達するのに対し、豊かさを実感していない世帯では1割にも届いていません。その分、年収といった現金の存在感が重視される傾向にあるようです。
「心の豊かさ」にも目を向けつつ、私たち自身の問題として考えて
しかし、お金があれば必ずしも幸せというわけでもないのが事実。同調査における「心の豊かさを実感する条件」によると、「経済的な豊かさ(55.0%)」を抑えてトップは「健康(72.3%)」という結果でした。心身ともに健康であるからこそ、豊かさを実感できるようになるのかもしれません。 しかし、日本は経済大国の中でも、とくに相対的貧困世帯が多いといわれています。格差を打開するために働き方改革も進められていますが、コロナ禍による失業など所得格差の拡大も問題視されるところです。経済的豊かさの実感は、やはり雇用の安定や賃金の保障など、収入が確保されてこそではないでしょうか。 しかし、貧困は当事者だけでは対策に限界があります。行政と民間、そして私たち自身がこの問題に向き合い、どうすべきかを考えていくことが大切でしょう。 【ご参考】貯蓄とは 総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。 【参照】 厚生労働省「令和元年度『国民生活基礎調査』各種世帯の所得等の状況」 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯)」(金融資産の状況等)3・57~61
古谷 梨子