就活を変えた新型コロナ、追い風になった学生のキャリア
理工系はニーズ高まる
2020年春の新型コロナウイルス感染症の拡大は、21年春卒の学生(20年度の大学4年生など)の就職活動、企業の採用活動を直撃しました。政府のルールで経団連会員企業などが「会社説明会などの広報活動は3年生の3月から、面接など選考活動は4年生の6月から、内定は10月以降」というスケジュールで動いており、これと感染症拡大が大きく重なったためです。企業の採用計画そのものも次々と変わっていきました。 就活生が企業を決めるただ一つの基準 文科系に人気の航空や観光の業界で新卒採用の中止や縮小が相次ぎました。逆に「巣ごもり消費」関連の運輸や個人向けインターネットサービスなどの事業が好調となりました。 理工系学生にとっては、ニューノーマル対応を機としたデジタル革新(DX)が中期的な追い風となりそうです。政府は近年、リアルとサイバーを融合した超スマート社会「ソサエティー5・0」を提唱してきました。
DXはデジタル技術によって組織の開発、生産、販売さらに人事、総務とすべての活動を変える動きを指しており、ソサエティー5・0の概念を具体化するものだといえます。そのため単なるIT関連サービスのビジネスにとどまらずあらゆる業界で、DX対応の素養を持つ理工系人材のニーズが高く推移するとみられます。 21年卒の学生は、新型コロナ対応で就活の手法ががらっと変わったことで、対応に追われました。まず大勢をひとところに集める会社説明会、特に就職支援会社などが主催する大規模な合同会社説明会の多くが、中止となりました。
その代わりに中心となったのは、ウェブを通じたオンラインの個別企業セミナーなどです。対面でないため学生が、質疑応答や担当者の対応などを通じて、会社の雰囲気を把握することが難しいです。いずれもパソコン画面越しのため、企業の印象さえあいまいです。物足りない、という感想が多く聞かれました。次年度以降も同様であれば、最終段階での会社訪問や、若手社員との交流の機会を、学生からも積極的に求める必要が出てきそうです。 もう一つの手法の変化は、面接のオンライン化。1次面接など早い段階では、ウェブ会議システムを活用した動画のオンラインを使う企業が大半となりました。オンライン面接は学生が自宅から参加するため、背景の見栄えが悪くないか、生活音が入り込まないか、通信が安定しているかなど神経質になります。さらに画面を通じてでは声が通りにくく、視線を面接担当者にうまく向けられないなど、表情を含めた学生の全体の雰囲気がわかりにくくなってしまいます。「自分らしさを十分に伝えられなかった」と悔しく思う学生が多かったようです。 もっとも企業、学生双方とも、「最後は対面で確認した上で、決断したい」という気持ちがあります。そのため、内定を決める最終面接では対面となるケースが中心でした。それでも小規模のIT企業などは以前から、オンラインの手法に対する信頼感が高いため、「最終面接まですべてオンライン」というケースがみられたといいます。どちらがよいかは企業のコミュニケーション文化によっていて、学生の性格とマッチングさせる上での一つの目安になるでしょう。