『辰巳』小路紘史監督 自主制作の自由度がもたらすものとは【Director’s Interview Vol.423】
次回は商業映画で!
Q:テンポよく物語は進みますが、人物が対峙する“間”もしっかり取られています。編集ではどんなところを気をつけましたか。 小路:2年間くらい編集していたので、もう正解が分からないんです(笑)。脚本と同じく、どこをゴールにしていいのか分からないぐらい悩みました。それでも自分の中で気持ちいいところは絶対にあったので、その感覚を信じて編集していました。編集もカメラマン山本とプロデューサー鈴木の3人で話し合いながら、落としどころを決めていきました。 Q:本作は追加撮影が多かったようですが、その可否はどのように判断されたのでしょうか。 小路:分かりやすさを重要視していたので、いろんな人の意見を聞いて物語が分かりにくいところは、必要な分を追加撮影しました。よりシンプルにするために追加撮影をした感じです。追加撮影ができるのも自主制作ならでは。ただ、追加撮影はスタッフや役者には迷惑をかけることなので、普段は絶対にあり得ないのですが、今回に限ってはそれも含めて作らせてくださいとお願いしていました。 Q:いま直したいところはありますか。 小路:いやぁ、それがあるんですよ(笑)。実際、公開の1ヶ月前まで編集で弄らせてもらったのですが、それも本当は駄目なこと。自主制作としてはこれで最後にしたいと思っているので、そういう意味では、この作品は悔いなく出来たんじゃないかなと思っています。 Q:本作はその面白さゆえ大きな反響を呼びましたが、実感はありましたか。 小路:何度も観てくださる方がすごく多くて、20回、30回観たという方もいらっしゃいます。元々映画ファンに深く刺さる映画を作りたかったので、そういう意味では届いてほしい人にちゃんと届いたことが実感できた。これからも色んな人に届ける努力をする必要がありますし、届けばいいなと思っています。 Q:次回作の構想など小路監督の今後の展望を聞かせてください。 小路:この作品は8年かかってしまったので、これからは2年に1本は作れる監督になりたいと思っています。いくつかの企画を並行して動かしながら作れるものを作っていくスタイルであれば、8年もかからないのではないかなと。 Q:次は商業映画に挑戦されますか。 小路:そうですね。自主制作という形では後悔のない作品になったので、次は商業作品という形で後悔のない作品作りをやってみます。頑張ります! Q:影響を受けた監督や好きな作品を教えてください。 小路:ハリウッドの有名な監督の作品ばかりを観てきたので、いわゆるスピルバーグやジェームズ・キャメロンなど、その時代のトップを走ってきた映画作家たちに影響を受けてきました。エンターテインメントでちゃんと自分の作家性を出せる監督たちですね。 監督/脚本:小路紘史 1986年生まれ、広島県出身。短編映画『ケンとカズ』が、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2011にて奨励賞を受賞。ロッテルダム国際映画祭、リスボン国際インディペンデント映画祭など4カ国で上映される。 2016年に『ケンとカズ』を長編版としてリメイク、東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門作品賞、新藤兼人賞・日本映画監督新人賞など、数々の新人監督賞を受賞。本作『辰巳』は、実に8年ぶりの監督作となる。 取材・文: 香田史生 CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。 撮影:青木一成 『辰巳』全国公開中 配給:インターフィルム ©小路紘史
香田史生
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