日本人が知らない「アジア系女性差別」酷い実態
アメリカを中心にアジア系を対象としたヘイトクライム(憎悪犯罪)が後を絶たない。アジア系の中でも、特に被害を受けているとされるのが女性と高齢者で、女性の中には「スタンガンを持ち歩いている」「外出を避けている」という人も出てきている。アジア系女性が今抱えている恐怖や悩みを、アジア系が多く住むロサンゼルスからレポートする。 ロサンゼルスで行われたアジア人への差別反対デモに参加した親子 ■ロサンゼルスで1000人以上がデモ 3月16日。アメリカに住むすべてのアジア系女性が、恐怖で凍り付く事件が起きた。その日、ジョージア州アトランタのマッサージ店とスパ店で働く従業員たちが、21歳の白人男性に店内で次々に撃たれ、殺害された。殺された計8人のうち、実に6人がアジア系の女性だったのだ。
逮捕された白人男性は、殺害の動機を「自分をセックス依存症にさせた原因を絶つため」と警察に語った。さらに警察官は、記者会見の場で「この日は彼(犯人)にとってbad day(悪い日)だった」と発言した。 「もう我慢の限界だ」ーー。カリフォルニア州ロサンゼルスでは事件から10日後の3月27日に「STOPアジア系ヘイト」を呼びかけるデモが起こり、市庁舎前に1000人以上が集結した。 「娘の身はこの私が守るしかない。だから、護身用にペッパースプレーをネットで注文したばかり」と語るのは中国から移民してきたユナ・リーだ。彼女の娘のケイトは10歳。小学校の授業を自宅で、Zoom経由で受けながら、全米各地で起きるアジア系へのヘイト犯罪事件の内容を、毎日、日記につけていると言う。
1月に、サンフランシスコで散歩をしていたタイ出身の84歳の男性が、いきなり体当たりされて殺された事件の内容についても、小学5年生のケイトは詳しく知っていた。「自分が襲われたらどうするかって? えーと、まず大声で叫ぶ!」と飛び跳ねながら語るケイト。 そんな娘を見ながら「以前は、家の近くの公園によく娘と散歩に行ったけど、最近は危ないから行くのをやめた。家から極力出ないようにしている」とリーは言う。 母娘で「LA」という文字の入ったピンクの帽子を被っているのも、単なるファッションではない。身を守るための安全策の1つ。「私たちは地元LAの人間だ。私たちの後ろにはコミュニティの仲間がついている」という意思表示なのだ。