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「話すと知恵が出まくる」ソクラテスは若い人に何をしたのか?

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偏差値52からスタートし見事京都大学に合格した農業研究者・篠原信氏は、水耕栽培の分野にて続々と新規技術を開発している。同氏は書籍『ひらめかない人のためのイノベーションの技法』(実務教育出版)にて、「センスがなくても創造的な仕事を生み出すことは可能である」と断言しているが、その根拠は何だろうか? 本連載でひも解いていこう。

ソクラテスの大発見「無知同士の問答が新発想を生む」

ビジネスの世界では、コーチングという技術がすっかり定着している。私が20年ほど前にコーチングの本を読んだとき、デジャブ(既視感)がとても強くて、何だろうと考えていたら、「あ、ソクラテスじゃん」と気がついた。そう思っていたら、本のあとがきにも「ソクラテスの方法と同じ」と書かれていた。 ソクラテスは、若い人たちに大変人気の爺さんだったらしい。彼が町を歩いていると若者が気軽に声をかけ、自然に話が盛り上がっているところに別の若者も参入して、とても賑やかだったようだ。そんなソクラテスが得意としていたのが、「産婆術」だった。 「産婆」とは、今で言う助産師だ(ちなみに、ソクラテスは石大工だったから別に産婆ではない)。ソクラテスの産婆術とは、無知の者同士が話し合っているうちに、新しい知を生み出してしまう方法のことだ。 その様子は、弟子のプラトンがまとめた『メノン』という本に象徴的に現れている。数学の素養のないソクラテスが、やはり数学の知識のない友人宅の召使を呼び、図形を前にして質問を繰り返した。召使は質問されるがままに「こうじゃないですかね」と答えるうちに、誰も発見したことのない図形の定理を見つけるシーンが描かれている。 若者は、ソクラテスと話をしていると、知恵が泉のように自分の口から飛び出てくることに感動し、それが快感でならないから、彼のそばに居たがった。ソクラテスは年寄りだったにも関わらず、物知り顔に説教するようなことはなく、むしろ若者から教えてもらいたがった。「それはどういうこと?」「ほう! それは興味深いね。こういう事実と組み合わせて考えたら、どう思う?」などと質問を重ねる。すると若者はウンウン考えながら、「こうじゃないでしょうか」と答える。それをソクラテスはさらに驚き、面白がり、さらなる質問を重ねる。 どんどん思考を深掘りしていくうち、若者はそれまで思ってもみなかったようなアイディア、思索の深遠さに自ら感動して、その快感を忘れられなかった。ソクラテスも知らない。若者も知らない。無知な者同士が、問いを重ねることで新たな知を発見する。これがソクラテスの得意とした「産婆術」だ。ソクラテスに関しては「無知の知」という言葉が有名だが、功績の最たるものは「産婆術」の発見にあるように思う。

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