部活を諦め、光熱費を滞らせて塾に――物価高で苦しむ困窮家庭の子どもに対策は #生活危機
3年間上がり続ける物価高が母子世帯に負担
国税庁「民間給与実態統計調査」によれば、2022年の給与所得者の平均給与は458万円。正社員だけで言えば、523万円だ。だが、厚労省の「2021年度全国ひとり親世帯等調査」によれば、「パート・アルバイト等」のシングルマザーの75%が就労年収200万円未満の世帯だという。一般的にこの世帯は「相対的貧困」の層と言われる。「相対的貧困」とは、生きるか死ぬかといったレベルではないものの、「同じ国・地域の人とくらべて収入・資産が少なく、生活も厳しく不安定な状態」であることを言う。
厚労省「国民生活基礎調査」によると、「相対的貧困」に該当する世帯の手取り収入(世帯可処分所得)の目安は、母親と子ども2人の3人世帯ならば220万円未満(2021年時点)。世帯の人数により金額に幅はあるが、月収換算で約18万円未満というのが相対的貧困の目安だ。前出の陽稀さんの家庭もそうした相対的貧困に属する家庭の一つと言える。 そうした家庭にとって近年重くのしかかっているのが物価高だ。総務省の「家計調査」に基づき、みずほリサーチ&テクノロジーズが行った試算では、食料品や光熱費などの支出割合が高い低所得世帯(年収300万円未満)の場合、1年分の家計の負担増は2022年度に6万9475円、2023年度が6万1230円、2024年度は5万529円に上ると見られている(いずれも前年度比)。この3年間はずっと家計負担が増えていることになる。食事や入浴の回数を減らして日々節約をしている家庭にとっては打撃が大きい。
文部科学省の「子供の学習費調査」によると、子どもの教育にかける出費のピークが公立校の場合は中3だとわかる。各家庭が公立の中3の子に出費する学習塾費の平均は年間38万9861円(2021年度)。他の学年よりも突出して高かった。 だが、相対的貧困に該当し、生活費に余裕がないシングルマザーの家庭では、この学習塾費を出すところに難しさがある。