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「ついに開館許可」コロナでアメリカの映画館はこんなに変わる

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新型コロナウイルスで「ハリウッド」も危機に直面

新型コロナは全世界で29万人超にも及ぶ死者(米ジョンズ・ホプキンス大学の集計、5月13日現在)、都市封鎖や買い占めなど、「100年に一度の危機」を発生させる中、アメリカの産業・文化・観光のシンボルである「ハリウッド」も、コロナ禍から逃れることはできない。 【画像】世界の大物女優が”セクシー衣装”で競艶 2019年のアメリカ国内の総興行収入は約114億ドル(日本は2611億円)、観客動員12億人超(日本は1億9491万人)、映画館での鑑賞回数は一人あたり年間およそ3.5回(日本はおよそ1.5回)。新型コロナは映画好きなアメリカ人の鑑賞習慣をすっかり変えてしまった。 3月11日。NBA選手や俳優トム・ハンクスの新型コロナ陽性が明らかになってアメリカ国民の空気が一気に変わった。映画館も翌週3月17日ごろから封鎖されてしまい、いまだに多くの州で映画館の封鎖は継続されている。 ジョージア州のブライアン・ケンプ州知事(共和党)は、反対意見があるにも関わらず都市封鎖を解除し、4月27日からの映画館の開館を許した。ところが、AMCやシネマークなどの大手映画館チェーンは「スタッフの確保や訓練などがあり、すぐには開館できない」と、今も閉鎖している。 ◆映画館閉鎖 再開しても上映作品がない! 何よりも上映する最新作がないのだ。3月~5月に公開予定だった最新作が相次いで上映延期となっている。『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』『クワイエット・プレイス PARTII』『ブラック・ウィドウ』といったブロックバスター(大手映画会社による大ヒット狙いの大作)以外の作品は、劇場公開を諦めて、ひっそりとオンデマンド配信となったものも多い。 ベン・アフレック主演の最新作『The Way Back』(原題/日本未公開)は、3月6日からギリギリで全米公開されたが、直後の映画館封鎖のため、わずか公開6日で上映取り止めとなり、製作・配給会社のワーナー・ブラザーズは3月24日からのオンデマンド配信を決行した。 ピクサー・アニメーション・スタジオとディズニーが組んだ『2分の1の魔法』も3月6日から全米で公開され、その週の興行成績1位を獲得したが、去年2019年の同じ週に上映開始となった『キャプテン・マーベル』と比較すると4割近くも落ち込んでしまった(日本では3月13日に公開予定だったが延期されたままだ)。 大ヒットを連発してきたピクサーだったが、興行成績の落ち込みは、アメリカ同時多発テロ事件(2011年9月11日)後よりも酷く、史上最低のオープニング収益となってしまった。 ◆Netflixは「巣ごもり特需」で会員1580万人増 このように「密接触」が制限され、家にこもることを余儀なくされている今、大きく飛躍したのが、先程から何度も触れている「オンデマンド配信/ストリーミング・サービス」だ。大手の「Netflix」や「Hulu」「アマゾン・プライム」など、さまざまな形でオンデマンド配信/ストリーミング・サービスは存在している。 人と接触せずに最新映画が見られる……。まさに今一番求められているものであろう。映画館が封鎖された後のストリーミング配信全体で34%伸びた(3月末集計)という。 その中でもNetflixは、当初720万人の加入者を見込んでいたのが、実際はその倍以上の1580万人の加入者を増やし、全世界で1億8200万人もの加入者がいるという。そして、テレビシリーズ化も発表されたNetflixオリジナル・ドキュメンタリー・シリーズ『タイガーキング: ブリーダーは虎より強者?!』(殺人・虐待など何でもありの”ヤバい”虎ブリーダーを追った異色のドキュメンタリーで全米では大ウケ)などの好調もあり、Netflixの株価は上昇中である。 日本でも6月から展開予定の新しいストリーミング・サービスが「ディズニー+(ディズニー・プラス)」だ。アメリカでは2019年11月から配信開始となり、現在では世界で加入者数が早くも5000万人を超え、Netflixを猛追している。 ディズニーの強みは、現在ではディズニー映画だけでなく、『スター・ウォーズ』やマーベル・コミック原作のマーベル映画という近年の買収で得た強力なラインナップを擁していることだろう。 『スター・ウォーズ』にとって初となる実写テレビシリーズ『マンダロリアン』を鳴り物入りで独占配信している。それだけでなく、スポーツ専門チャンネルのESPNや、ドキュメンタリー専門チャンネルのナショナルジオグラフィックのプログラムまで配信している。 ◆劇場公開予定作が突如配信 大手シネコンと対立! またこのような状況下ゆえ、「劇場公開をしないとエントリー出来ない」という厳しいルールを設けているアカデミー賞も、「今年は例外」とし、ストリーミング作品もエントリーできるように変更する予定である。 そんな中、大手製作・配給会社ユニバーサル・スタジオと、大手映画館チェーンのAMCとリーガルが大揉めしている。ドリームワークス・アニメーション製作の『トロールズ ミュージック★パワー』は、当初、4月10日から全米公開予定だったが、幾度か変更になった後、突如、ユニバーサルは4月10日からの劇場公開と同時にオンデマンド配信をすると発表した。 アメリカは映画配給と映画館はグループ企業ではなく完全に別経営となっている(ご存知のように日本には映画製作会社の系列の映画館チェーンがある)。そんな事情もあって、AMCとリーガルは、相談なしにユニバーサルがオンデマンド配信を決行したことに激怒し、「今後一切、ユニバーサル・スタジオ作品を上映しない」という声明を出している。 ユニバーサル・スタジオが今後のラインナップには『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』や『キャンディマン』などの大作があるが、それを映画館で上映しない、ということがお互いにとって可能なのだろうか? コロナ禍での苦しいせめぎ合いが続く。 劇場公開とストリーミング配信、それぞれに良さはある。とはいえ、『スポンジ・ボブ/スクエアパンツ ザ・ムービー』(2004年)を、アメリカの子どもたちで満員に埋まった劇場で、スポンジ・ボブのテーマ曲に合わせて楽しそうに子どもたちが大合唱していたのを見ながら鑑賞したことは忘れられない。あの体験は、劇場でしか味わえない。 そして、筆者が映画について書くときにいつも参考しているのは、劇場でしか感じられないアメリカの一般人観客の反応だ。日本人である筆者とは違うタイミングやシーンで大笑いしたり、拍手したりするのを見るのは非常に参考になる。 ◆ドライブ・イン・シアターが盛況 IMAXも導入! そんな中、意外な救世主が現れた。古くからあるドライブ・イン・シアターだ。密を避けながらも、周りの反応も伺える。現在でも、アメリカには約300館のドライブ・イン・シアターが生き残っている。カリフォルニア州ロサンゼルス郊外にあるドライブ・イン・シアターは、新型コロナ以降、50%も収益が上昇した。 俳優ロバート・デ・ニーロが主催者の一人である「トライベッカ映画祭」などでお馴染みのトライベッカ・エンタープライズは、「トライベッカ・ドライブ・イン」と称して、6月25日からドライブ・イン・シアターにてIMAX上映を始めるという。 ハリウッドはこれまで何度か危機は訪れた。スタジオ・システムの終焉やテレビの普及により、戦後は劇場観覧者数が下降していき、60年代後半には大手の映画スタジオが破産に追い込まれそうになった。その時にインディペンデント(大資本ではない独立系)の小さな製作会社が新しい作品たちを生み出していった。 『卒業』(1967年)や『俺たちに明日はない』(1967年)、『暴力脱獄』(1967年)などがそうだ。それらは「アメリカン・ニューシネマ」という新しいムーブメントとなり、この時期に生み出された名作は、後世のハリウッドに影響を与え続けている……。 ◆ウイルス映画『コンテイジョン』監督が「コロナ安全対策委員長」就任 今は確かに厳しい状況ではあるが、ハリウッドはまたここから新しい物を生み、発展を遂げると信じている。事実、ハリウッドではこの100年に一度の危機の対策に取り組む姿勢を見せている。 アメリカ監督協会(DGA)は安全対策の特別委員会を設置。なんと委員会にスティーブン・ソダーバーグ監督が選ばれた。新型コロナウィルスの影響で「おうち時間」が増え、Netflixで連日人気配信1位となったのが、新型コロナウイルスと酷似しているウイルスパンデミックの恐怖を描いたスティーブン・ソダーバーグ監督作『コンテイジョン』(2011年)だった。まさに適任であろう。 それでもまだまだ撮影開始までの道のりは険しい。群衆撮影や、演者とスタッフの健康管理、保険補償、ケータリング(個別のロケ弁当に変更を検討)などの見直しなどが必要で、映画業界では対策を模索中である。 そんな中、クリストファー・ノーラン監督最新作の『TENET テネット』は、全米での7月17日公開(日本は9月18日予定)を延期せずに上映する、と発表している。クリストファー・ノーランは、自らペンを取ってワシントン・ポスト紙に「映画館は社会生活の重要な部分」と切実に語った一人である。 映画関係者だけでなく、映画ファンも一日も早い映画館の開館の日を待っている。あのドキドキやワクワクを同じ映画ファンと共有できる映画館が開くことを。 文:杏レラト (あんずれらと)アメリカ南部在住。雑誌「映画秘宝」(扶桑社)、「ユリイカ スパイク・リー特集」(青土社)、「ネットフリックス大解剖」(DU BOOKS)などに執筆。著書に『ブラックムービー ガイド』(スモール出版)。

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