樹木の根がアスファルトよりも「強い」理由とは…わずか10センチ四方で700キロ分の力を生み出せる「驚きの理由」
私達の身の周りは道端の雑草からスーパーに並ぶ野菜まで様々な植物で溢れていますが、よく考えてみると答えがわからない様々な疑問が頭に浮かびます。 【画像】これが植物の細胞…!樹木の根は、アスファルトをも割る力を秘めている そんな植物にまつわる「謎」に第一線で活躍する研究者たちが答えてくれるのが日本植物生理学会WEBサイトの人気コーナー「植物Q&A」です。このたび3000を超える質問の中から厳選された60のQ&Aが1冊の本にまとまり、ブルーバックス『植物の謎 60のQ&Aから見える、強くて緻密な生きざま』として刊行されました! 今回は収録されたQ&Aの中から樹木の根がアスファルトを持ち上げる仕組みをご紹介。よく目にする光景ですが、そのパワーはどこから生み出されるのでしょうか。早速見ていきましょう。 ※本記事は、『植物の謎 60のQ&Aから見える、強くて緻密な生きざま』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです。
Q. 樹木の根がアスファルトを持ち上げる仕組みは?
街路樹の根によってアスファルトや舗石などが持ち上がっているのをよく見かけま す。自分なりに調べた限りでは、「栄養を求めて根が伸びるにしたがい、その根元が 太くなって舗石が持ち上がる」とありました。 しかし、根元が太くなるといっても、微視レベルでは細胞が分裂して数が増えるのだと思います。細胞分裂に必要な一瞬一瞬を考えると、土や舗石の重みは皮を通して連続的に個々の細胞にかかっており、細胞分裂で少しでも根の体積が増えること自体、不思議です。 ましてや、舗石などを持ち上げるような機械的な力が発生することは、どうしても想像できません。ネットで見つけた情報に、「根の最外層は表皮で覆われ、その内側には皮層があり、その最内層には内皮があって、木部と篩部を含む中心柱を囲んでいる。根の先端には根冠で保護された根端分裂組織があり、根はここで成長している」とありました。 ということは、根元では私の想像するような細胞分裂は起きておらず、すでに機械的抵抗力を備えた組織が水分を吸収して肥大するだけなのでしょうか。それとも舗石や土の重みも、細胞レベルの面積あたりに配分されれば、十分に耐えられるほど軽いということでしょうか。 例えば、ごく単純化して1m²に1トンがかかっているとすると、1mm²に1gとなります。これは細胞骨格の強度や分裂時の染色体の動き等にとって、耐えられる圧力なのでしょうか。