【ここに生きる】「球磨川に罪はない」変わり果てた老舗旅館の姿に涙 前向く女将
熊本県内を襲った未曾有の豪雨から7か月。県内の死者・行方不明者は67人にのぼります。県内でも特に大きな被害を受けた人吉市。球磨川沿いで80年以上前から多くの客をもてなしてきた人吉旅館も氾濫した球磨川から濁流が流れ込み、壊滅的な被害を受けました。「なくしたくない」変わり果てた旅館を前に涙ながらに語った韓国出身の女将は、多くのファンから寄せられた応援メッセージを胸に、ことし夏の部分再開を目指します。異国の地で女将になって30年。「これからも球磨川とともに生きる」多くのものを奪われてもなお球磨川を愛する女将の言葉に込められた思いと再建への決意とは。
「夏目友人帳」の聖地 女将もファン
球磨川沿いにある1934年創業の人吉旅館。現在は3代目の堀尾謙次朗社長と女将の里美さんが切り盛りしています。 熊本県出身の漫画家・緑川ゆきさん原作「夏目友人帳」の舞台にもなった熊本県人吉市。 雨宮神社や天狗橋など、夏目友人帳の聖地となっているスポットが各地にあります。 人吉旅館女将 堀尾里美さん 「今年は新型コロナの影響で宿泊客もぐっと減りましたが、最近は夏目ファンの若いお客様が来ることも増えていましたね」 美人の湯と呼ばれる温泉が自慢の旅館には、聖地巡礼にきた夏目友人帳ファンが訪れることも多かったといいます。数年前、韓国から夏目友人帳のファンだという親子が泊まりに来たときは里美さんが車を出して市内のスポットを巡り、夏目友人帳ゆかりのカフェでお茶をしたことも。自身も夏目友人帳の大ファンだという里美さん。人吉が舞台になっている漫画があると知り、書店に足を運んだのがきっかけでした。
「主人公がとても心優しいんです。ストーリーも美しくて読みながら涙を流すこともあります」 旅館のロビーには、単行本や夏目友人帳グッズが並んでいました。
「ファン同士が仲良くなって、会話が弾んでいるのを見ると本当に嬉しいんです。夏目友人帳はいろいろな年齢層のファンがいて、私も話に混ぜてもらったりしました。会話の時間はとても楽しかった」