火災で6人が死亡した中村荘（2017年5月）ⓒNNN

　2017年5月に北九州市小倉北区のアパート「中村荘」が全焼し、6人が死亡した火災は、アパートに放火した疑いで元住人の男が逮捕され、新たな局面を迎えた。7年以上経過する中での展開に、現場周辺の住民らからは驚きの声が上がり、改めて犠牲者を悼む言葉が聞かれた。 【写真】中村荘の跡地。駐車場になっている

　中村荘の跡地は住宅街にあり、現在は駐車場になっている。近くに住む男性（82）は「火災では自分の家なども被害を受けて大変だった。7年後の今になって逮捕されたのはびっくりした」と話した。

　火災当時、男性は家族と5人暮らしで、においで火災に気付いて外に出ると目の前の木造2階建ての建物が燃えさかっていた。

　火災の影響で住宅のガラスが割れるなどの被害があった。男性は「中村荘に住んでいる人たちとの関わりはなかったが、亡くなった人たちは本当に気の毒で、ご冥福を祈る」と語った。 　生活困窮者支援に取り組む同市八幡東区のNPO法人「抱樸」は、中村荘での火災の犠牲者の一人を支援していた。元ホームレスの男性で、抱樸の支援で中村荘から別のアパートに引っ越す予定だったという。奥田知志理事長（61）は「次の道が開けそうなところで火災に遭い、非常にショックだった」と振り返り、「6人も亡くなっている火災で許せない思い」と語った。

　奥田氏によると、中村荘は簡易な手続きで安価に入居でき、生活困窮者らの受け皿になっていたというが、「安くて住めるだけではいけないという課題をあぶり出した」と話す。

　抱樸は、火災後に耐火設備が整った小倉北区のマンションの約100戸を借り上げ、見守り支援付き住宅として生活保護受給者らに貸し出し、ほぼ満室の状態が続いているという。

防火対策見直す契機に

　北九州市では火災の直後から、生活保護受給者の暮らす施設を担当するケースワーカーが訪問時に防火対策を確認する仕組みを導入するなど、防火対策が見直される契機となった。

　市消防局指導課によると、ケースワーカーの訪問時には木造などの建物の構造、消火器、火災警報器の設置状況、避難経路が確保されているかをチェックする。不備があれば管轄する消防署に情報提供し、必要があれば署の担当者が施設に出向いて指導を行う。

　市では中村荘と同様の木造共同住宅の一部を新築する場合などに自動火災報知設備の設置を義務づける条例改正も行われた。