「ESG投資」と「社会的インパクト投資」、これまでとこれから
昨年、2020年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの影響もあり、世界的に「ESG投資」が注目を浴びた1年になりました。いまだコロナ禍の最中にある今年、2021年もこの傾向は継続することが想定されます。 そこでここでは、この「ESG投資」に加え、さらに一歩踏み込んだ「社会的インパクト投資」のこれまでを振り返ることで現在地点を確かめつつ、これから将来に向けたお話をしていきましょう。
「ESG投資」とは
ESG投資の根底には、2006年に国連が主導して発足した「責任投資原則(Principles for Responsible Investment、PRI)」があります。これは、「世界の環境(Environment)、社会(Social)、統治(Governance)の課題を、従来の投資分析と意思決定のプロセスに組み込んで、持続可能な金融システムを構築しましょう」という趣旨で6つの項目を定めた原則です。 このPRI原則に基づいて「環境(Environment)」、「社会(Social)」、「統治(Governance)」それぞれの英単語の頭文字をとったものが、近年世界的に注目を浴びているESG投資です。ESG投資とは、文字通り環境や社会、ガバナンス(統治)への対応を意識した投資です。近年、PRI原則に賛同する機関投資家が世界各国で増加しており、ESG投資の残高は世界全体で30兆ドルを超えています。 しかしながら、日本銀行はこのESG投資の世界的潮流を認めつつも、日本のESG投資の実務上の課題を指摘しています。 その課題とは、「(1)ESG投資に利用可能な情報が限られている、(2)ESG要素と金銭的リターンの関係性に確信が持てない、(3)先行きのリスクなどを検討するにあたり、考慮すべき要素(政治・政策、科学技術、気候変動の影響度など)にかかる不確実性が大きい、(4)最新の科学技術などの専門知識を活用できる体制を整備する必要がある」の4つです(日本銀行2020年7月『BOJ ESG 投資を巡るわが国の機関投資家の動向について』より引用)。