【世界に後れを取る日本の創薬力】反ワクチン派のケネディ氏の米・厚生長官就任でも予防できる開発力と接種率で感染症に備えよ
日本は15年以降、麻疹の土着ウイルスが存在しない「排除国」とされているが、海外からの来訪者や帰国者をきっかけとした感染が時折起きている。空気感染で広まるはしかは、ワクチンを接種していなければあっという間に多くの人が感染する。ワクチンのなかった時代は誰でも感染し、回復する人も多かったのではしかを一過性の病と思っている人は多い。しかし、かつては100人に1、2人が死亡し、後遺症を残すこともある重症化リスクの高い病気だ。 かつてないほどの外国人観光客が日本に押し寄せている今、自分の子供を守るのはもちろん、周りの人を感染症から守るために子供には定期接種のワクチンをきちんと受けさせてほしい。また、はしかの予防接種をまだ受けられない1歳前の赤ちゃんは、人混みを避けるなど感染の機会を減らす工夫も必要だろう。
再び脚光の天然痘ワクチン
新型コロナのワクチン開発では後れをとった日本だが、実は世界に誇れるワクチンを持っている。天然痘ワクチンの「LC16m8(エルシー16エムエイト)」だ。1980年に世界保健機関(WHO)によって根絶宣言が発表された天然痘は、その後も発生確認はなく、天然痘ワクチンとしての役目は終えているが、バイオテロ対策として国内での備蓄は続いている。世界情勢が不安定な中、卑劣なバイオテロから世界の人々を守る大事な役割を担っているワクチンなのだ。 それだけでなく、このワクチンは2022年に世界的な流行が確認されたMポックス(サル痘)への応用が期待され、今回日本から流行地へ300万人分が寄贈されることになった。日本独自のワクチンで、その高い安全性と有効性が世界的に評価されていることはもっと知られてもいいだろう。 岡部さんは「新型コロナワクチンは成功例ばかりが表に出たが、成功の裏には多くの失敗がある。日本はどちらかというと失敗を許してくれない社会。次の感染症のパンデミックに備え、日本のワクチン開発の必要性を多くの人が理解し、ささえてくれるようになってほしい」と話している。
平沢裕子