【世界に後れを取る日本の創薬力】反ワクチン派のケネディ氏の米・厚生長官就任でも予防できる開発力と接種率で感染症に備えよ
アメリカのトランプ次期大統領は、公衆衛生や福祉に関わる厚生長官にロバート・F・ケネディ・ジュニア氏を任命する意向を発表している。ケネディ氏といえば、ワクチンの安全性や栄養学について物議を醸す発言をするなど、反科学を売り物にしてきたことでよく知られる。それだけに米国のワクチン行政や感染症対策の先行きが見通せず、日本の感染症予防対策にも少なからぬ影響が出る可能性が心配される。 対岸の火事ではいられないが、そもそも日本で速やかにワクチンの開発と供給ができれば心配には及ばない。国産ワクチンの開発は安全保障上の観点からも不可欠なだけに、他国に依存しない日本の創薬力が求められる。
新型コロナで米ワクチンに依存した日本
新型コロナウイルスのパンデミック初期、日本で使用されたワクチンは、ファイザー(米国)とモデルナ(米国)のmRNAワクチン、アストラゼネカ(英国)のウイルスベクターワクチンの主に3つ。モデルナのワクチンは接種後に注射跡が大きく腫れる副反応「モデルナアーム」で人気がなかったが、それでもこの3社のワクチンにより死者数、重症者数は劇的に減少した。感染力の強いオミクロン株の出現で再び感染者は増えたが、ワクチンによる死者数を抑える効果は明らかだった。 3社の使用割合をみると、ファイザーが約70~80%、モデルナが約15~20%、アストラゼネカが約5%。日本が米国産ワクチンに大きく依存していたことがうかがえる。 もちろん日本も複数の企業や大学などの研究機関がワクチンの開発を進めていたが、実用化できたのはパンデミック後期になってから。新型コロナワクチンをめぐっては、中国やインドでもパンデミック真っ最中にそれぞれ国産ワクチンを開発、国内外で広く使用されたことを考えると日本のワクチン開発が遅れを取っていたことは否めない。 新型コロナ対応で内閣官房参与も務めた川崎市健康安全研究所参与の岡部信彦さんは「日本での新型コロナワクチンの開発は、研究自体はいいところまでいっていたが、製品開発への道は遠かった。そこは今後の課題だろう」と指摘する。