みのもんた引退宣言「テレビはやめても銀座はやめない」〈仕事は手あたり次第。よく当たったし、楽しかったね〉――文藝春秋特選記事【全文公開】
違和感をもったのは去年の8月だったね。毎年2週間は夏休みをとるようにしていて、東京から離れてゆっくりしていたんです。その時に、録り溜めておいた「秘密のケンミンSHOW」(日本テレビ系列)をチェックしていた。そこで、皆の話に自分だけがついていけていないことに気づいたのです。 たとえば味噌汁の話題になったとします。僕は「味噌汁っていいよね。地元で育った大豆を、酵母を使って熟成させて……それからこの湯気の感じもね」と、思いを乗せた話をしたいんだけど、周りはすでに「ハイ次は?」と話題を移そうとしている――そんなふうに、自分と周囲のテンポ感が全然違うということが、客観的に見て初めて分かったわけ。会話のテンポの遅れは、相手に不快感を与えてしまう。しかも、周囲にそれをフォローする余裕もないから、水と油みたいになってしまっている。「ああ、俺、浮いてるな」と、しみじみ感じちゃってね。「俺は迷惑をかけないように極力黙って、進行は久本(雅美)君が全部やったほうがいいんだろうな」という考えに自然と傾いていきました。 降板をいつ切り出そうか迷っていたけど、読売テレビも、僕と思惑が一致してきていたんだろうね。今年の正月、番組スタッフ達と一杯飲んでいた時に「うまい感じでフェードアウト出来ないかな」って相談をもちかけたんです。すると、「いやー、私達も正直そう感じていました」と答えが返ってきた。もう長年つきあっていて友達みたいなもんだから、皆アッサリしてましたね(笑)。 ◆◆◆ みのもんた(本名・御法川(みのりかわ)法男)は、1944年生まれ。立教大学経済学部を卒業後、1967年に文化放送に入社。ラジオ番組「みのもんたのセイ! ヤング」などの担当を経て、1979年にはフリーに。1989年から司会を担当した情報番組「午後は〇〇おもいッきりテレビ」(日本テレビ系列)で人気を確立し、2006年には「1週間で最も多く生番組に出演する司会者」としてギネス世界記録に認定された。自身の個人事務所を兼ねる水道メーター製造・販売会社「ニッコク」の代表取締役社長も務める。 今年1月には、MCを務めていた「秘密のケンミンSHOW」のリニューアルに伴い、3月いっぱいでの番組降板が明らかになった。降板後のレギュラー番組は無くなり、事実上の引退となる。30年以上にも及ぶ自身のテレビ人生を、みのが振り返った。
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みのもんた/文藝春秋 2020年4月号