【オプション少ない素のカレラ】ポルシェ911カレラ(1) グリーンの992型 長期テスト
初回 それぞれに思いを描くポルシェ911
text:Mark Tisshaw(マーク・ティショー) translation:Kenji Nakajima(中嶋健治) 新型コロナウイルスの影響で在宅勤務になって、しばらくが経つ。同僚のベン・サマーレルにも、いつもお願いしていたカメラマンのオルガン・コーダルとも、久しく会っていなかった。 【写真】ポルシェ911カレラ ターボSと比較 (79枚) ある秋口の、天気のいい日。筆者がポルシェ911に乗って到着すると、いつものメンバーがオックスフォードシャーの駐車場で、わずかに会話を交わしていた。 オルガンが、リアのエンジンカバーを見て指摘する。中央のブレーキライトを挟んで、左右に縦9本のフィンが付いている。そして中央のブレーキライトは、縦に2本。911をモチーフにしているようだ、と。 筆者は、リアバンパーの立体的なポルシェのエンブレムに見入っていた。水平に伸びるテールライトとの一体感が、素晴らしい。 ベンは、ボディサイズが大きくなったことで、プロポーションが改善されただけでなく、見た目も良くなっていると話す。ボディを軽くなでながら。 しばらくマニアックな話を楽しんで、写真撮影のために走り出す。アクセルペダルを踏み込むと、思わず笑顔になる。 この駐車場は定番の撮影場所。撮影が始まるまでに、長く話し込むことは珍しい。スタッフ誰もが、事前に詳しい情報を知っていることも珍しい。それが、ポルシェ911だ。 特別でもあり、いい意味で、いつものクルマ。自動車好きの全員が好き、というわけではないだろう。でも、誰もが尊重し、それぞれに思いを描くモデルだと思う。
約1万kmを後にしても新車時のように良い
ポルシェのファンは、911にかなり詳しい。その特徴を強く理解している。代替わりするたびに成長を続けているが、クルマが目指すところは、いつも明確で変わらない。 最新の992型が発表されたのは2018年。発売は2019年初頭で、新鮮味は薄れつつある。筆者も、992型とは何度も会っている。911との時間は常に特別なものだが、それもいつものことだ。 長期テスト車両としてやってきた992型の911は、数多くある派生モデルの原型となる、ノーマルのカレラ。アベンチュリン・グリーンの上品なカラーで、1年ほどプレス用車両として活躍してきたクルマ。 これまで約9600kmの距離を重ねている。多くの自動車メディアに登場し、AUTOCARでも一度試乗している。 自宅付近まで別のスタッフが乗り付けてきて、雨の中を30kmほど運転したこともある。気持ちをくすぐるドライビング体験や、素晴らしい品質を確かめることができた。 今回の長期テストでは、3点に注目して進めていきたい。まず1つ目は、1年間も自動車評論家たちによって走り込まれた911は、どんな印象なのか。 すでに筆者が480kmを走り、その第一印象は掴めている。好感触なことは、1年前に試乗したときと変わらない。 2つ目は、911の実用性。乗りやすいことは十分理解しているが、日常的な条件での感じ方を確認したいと思う。 3つ目は、どの911を選ぶべきか、ということ。長期テスト車は後輪駆動のカレラで、最高出力は992型の中で一番低い。カレラSは450psだが、これは385psと、65psの小さくない差がある。