「遠くない未来に取材ヘリを飛ばしたい」乗りものニュース・浦山利史社長
インターネットが一般に普及し始めてから約20年が経ちます。キュレーションやブログ、SNSなど「流通」のテクノロジーが劇的に進化し、これに呼応するように新興企業や個人など「生産」を担うメディアの数も激増しました。ネットのテクノロジーの恩恵を誰もが普通に受けられるようになった現在、生産サイドのメディアはどのように進化しようとしているのでしょうか? 第一回は、鉄道や自動車など交通系の情報に特化した「乗りものニュース」を運営する株式会社メディア・ヴァーグの浦山利史代表取締役(41)に話をうかがいました。
雑誌の面白さと新聞の取材力の融合を目指す
大学を出た後、ネコ・パブリッシングという自動車や鉄道を扱う出版社に入りました。コアな内容、読者が多いこの会社で、メディア業の面白さを学びました。 2002年くらいから個人でサッカー関連のブログを始めたところ、1年で100万PVくらい読んでもらうことができました。ミクシィのコミュニティで盛り上がったり、そこでオフ会を開催したら80人くらい集まったりなど、「ネットってすごいパワー持っているな」と個人の趣味の範囲でも分かりました。紙で11年、書籍や雑誌に携わったことで、情報の質を大事にする感覚が培われました。そこにネットのスピード感とリーチ力を融合できると面白いなと考え、いまに至っています。 雑誌はネットメディアと違い、自分たちの意見をユーザーにある程度強めに押し付けるような側面があるんですよね。その強さがコミュニティを形成していく、その“一方通行性”が面白いなと思いました。特に自分が関わっていた会社では専門知識が必要な媒体が多かったこともあり、業界で有名な人など、編集部には強力な人間がたくさんいました。その人たちの持っているパワーがメディアに影響していくところが面白かったです。 独立後、共同事業として「フットボールチャンネル」(や「フルカウント」(を手がけ、ネットメディアのスピード感を業務を通じて学ぶことが出来ました。 弊社で運営している「乗りものニュース」の編集部は、フリーライターや編集プロダクションで働いていた人材を中心に編集長以下5名のスタッフで運営しています。記事は基本的に内製で、編集部員が取材に行くようにしています。雑誌の取材というと、基本的に自分たちの文脈があって、そこに沿った取材の仕方をすることが多いですが、新聞は逆で、現場主義になるので自分がどう考えていようが、起きたことを正しく伝える。その点は、乗りものニュースでもしっかり持っていなければならないと考えています。