「ワクチンを手にした人類」vs「増える変異株」のせめぎ合い
世界における新型コロナウイルスの感染数者と死亡者数は2021年1月に過去最悪を記録したが、2月になって感染者数は激減した。その理由として、ホリデーシーズンが終わって人の流れや集まりが減少したことや、天候の影響、ワクチンの普及などが挙げられる。しかし、感染者数はロックダウンおよびそれぞれの国の政策や人の行動に大きく左右されるので、確証的なことはいまだにわからないままだ。 新型コロナウイルスのワクチン不足と、“お粗末な予約サイト”という米国の惨状 こうしたなか、世界各国では新型コロナウイルスのワクチンが本格的に流通し始め、それぞれの国の戦略に沿って接種が進められている。タンザニアのように新型コロナウイルスのワクチンを“却下”して自然のレメディ(治療法)で対抗する国もあれば、変異株のせいで従来株用のワクチンが使用できなくなる国もあった。日本でも2月14日にファイザー製のワクチンが承認され、17日から医療従事者への接種が始まっている。 さて、免疫を「逃避」する変異株が蔓延する南アフリカは、どのワクチンを選択したのだろうか? すでに新型コロナウイルスの感染歴がある個人にも接種が必要なのだろうか? 2021年2月に世界で起きた新型コロナウイルス関連の動きを見てみよう。
南アフリカの変異株にはワクチンの有効性が低下
英国のイングランド公衆衛生庁(PHE)は2月2日、いくつかの地域で確認された新たな突然変異株の存在を明らかにした。南アフリカの変異株にみられる「E484K」と呼ばれる変異は、免疫を「逃避」する能力をもつことがわかっている。それゆえ南アフリカの変異株には、これまで承認されてきたワクチンの有効性が低くなることが懸念されていた。 実際にこの変異株が蔓延している南アフリカで2月7日に実施された小規模な治験では、英製薬大手アストラゼネカ製のワクチンの有効性は25%以下で、軽度から中等度の感染に対してほとんど防御効果がないと報告されている。南アフリカはすでにアストラゼネカ製のワクチンを100万人分確保しており、翌週から医療関係者への接種を開始する予定だった。ところが、それを一時的に見送るかたちとなっている。 また、南アフリカ変異株に対するジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)のワクチンの有効性は57%、ノヴァヴァックスが製造したものは49%だった。さらにJ&J製のものは重症化や死亡に対する保護効果において、85%の有効性が示されている。 このことから南アフリカでは2月11日、アストラゼネカ製のワクチンをいまだ変異株が蔓延していない国々に転売する予定であると発表。代わりに保護効果が示されているJ&J製のものを使用すると決定し、2月17日から医療関係者を中心に接種が始まっている。一度の接種で済むJ&J製のワクチンが使用されたのは、南アフリカが初めてだ。 また、mRNAワクチンの先鋭となったファイザーとモデルナは、すでに南アフリカ株に対抗するための改良ワクチンを開発している。両社ともにまもなく臨床試験が開始される見込みだという。