市原隼人、三谷幸喜作品初出演「夢の中にいるみたいに楽しくて(笑)」
“野村萬斎主演×原作:アガサ・クリスティ×脚本:三谷幸喜”シリーズ第3弾となるスペシャルドラマ「死との約束」が、3月6日(土)にフジテレビ系でオンエア。それを前に、山本耕史、シルビア・グラブ、市原隼人が作品への思いを語った。 【写真を見る】本堂家の長男・本堂礼一郎役の山本耕史、礼一郎の妻・本堂凪子役のシルビア・グラブ、次男・本堂主水役の市原隼人 「死との約束」は、“ミステリー界の女王”アガサ・クリスティが1938年に発表した長編小説。「死海殺人事件」のタイトルで1988年に映画化されているが、日本での映像化はこれが初めてとなる。 今回、三谷は舞台を“巡礼の道”として世界遺産にも登録されている熊野古道に、そして時代設定を昭和30年に置き換えて執筆。三谷流の「死との約束」を作り上げた。 主人公は、「オリエント急行殺人事件」「黒井戸殺し」に続き、萬斎演じる名探偵・勝呂武尊。萬斎のドラマ出演は「黒井戸殺し」以来、約3年ぶりとなる。 そして勝呂をとりまくキャストには、勝呂とは旧知の仲で勝呂にとって“運命の女”の代議士・上杉穂波役に鈴木京香、積極的に勝呂の捜査に協力する医師・沙羅絹子役に比嘉愛未、本堂家の税理士・十文字幸太役に坪倉由幸、穂波に随行する編集者・飛鳥ハナ役に長野里美、勝呂に捜査を依頼する警察署長・川張大作役には阿南健治が決定している。 ほか、事件の被害者で家族を思いのままに支配しようとする本堂夫人役に松坂慶子、本堂家の長男・本堂礼一郎役に山本耕史、礼一郎の妻・本堂凪子にシルビア・グラブ、次男・本堂主水役に市原隼人、長女・本堂鏡子役に堀田真由、次女・本堂絢奈役を原菜乃華が務める。 そして今回、事件の根幹に関わる本堂家の3人、山本、シルビア、市原が作品への思いを語った。 三谷作品の常連で、三谷が最も信頼する役者の1人である山本が演じる礼一郎は、世間に対してどこか冷めていて、後ろ向き。長男でありながら、家族の問題からも距離を取り、なぜか夫人には一切、口答えをしない。 同じく、三谷作品にはおなじみのシルビアが演じる凪子は、そんな夫の態度を好ましく思わず、本堂家に対しての距離の取り方も気を使いながら、微妙なバランスを保っている。 さらに、市原が演じる主水は、幼いころから夫人に支配され、外の世界を全く知らずに育ってきた。そんな自分の葛藤を旅先で声を掛けられた沙羅に見透かされ、心を開き始める。なお、市原は今作が三谷作品初出演となる。 ■山本耕史コメント ――今回の出演のお話が来たときの率直な感想は? 「オリエント急行殺人事件」を見たときに、三谷さんらしいし、萬斎さんが特殊な世界観を醸し出しているなと、とても印象に残っていました。今回のお話を頂いた時はちょうど東京・PARCO劇場で「大地」という三谷さんの舞台をやっている最中だったと思います。 「ああ、あのシリーズの世界観に入れるんだ」と率直にうれしかったのと、続けてまた三谷さんの作品に出演できるっていう安心感もありました。 ――台本を読まれての感想は? このドラマは、面白いボタンの掛け違いがあって、三谷さんがすごく得意とする分野の脚本。結構入り組んだ難しいミステリーを三谷さんがうまく書いている本だと思いました。 謎解きのシーンは、三谷さんらしい密室劇というか。ゆるやかなところから追い込んでいって、トンネルを抜けて、抜けて、こう出る、みたいな。 長尺のワンシチュエーションのシーンは、撮影は大変ですけれど、昔は結構こういう感じの緊張感あったなあと。最近はいろいろな場面で、いろいろなことが起きてという、テンポの速い作品がわりと多いと思うんですけれど、今回のように同じセットでじっくり話が展開していくという脚本は、僕は演じていてとても楽しかったです。 ――今回の役を演じるに当たって。 実を言うと、今回のドラマで着ている衣装は「大地」のときに使っていた舞台衣装なんです。三谷さんに「あの役のイメージで」って最初言われて、「あ、そのままでいいんだ」というところもあったので。 もちろん、全然違う役ではあるんですけれど、いでたちや、醸し出すうさんくささは、ゼロからよりは役に入りこみやすかったです。 ――実際に演じられての感想。 自分にも他人にも諦めていて、後ろ向きで、世間に背を向けたような影のある役なので、逆に楽しみながら演じました。この人だったらどんな行動をするだろうかとか、ちょっと普通でない、社会に適応していないところをさまざまな場面でどうやって表現しようかなと、アイデアも出しながら演じました。 ――共演者の方の印象は? 萬斎さんとは初めてご一緒したのですが、やっぱりこの役は萬斎さんにしかできないなとあらためて感じましたし、その空気感を間近で浴びている感じでした。 松坂さんは昔からドラマでお世話になっていて、息子役も今回が2度目なんです。前回も僕が母に支配されている役だったので、松坂さんに「こういう役、多いんですか?」って聞いたら、「全然ない」とおっしゃって。 そんな貴重な、あまりない役を2回もご一緒させていただいて光栄でした。現場ではにこやかで、ふわーっとなごましてくださる雰囲気の方なので、(大先輩ですけれど)現場に安心感を与えてくださっていました。 ――最後にメッセージをお願いします。 ちょっとしたことでみんなの思惑が偶然重なってしまって、そしてお互いがお互いをかばったり、怪しんだり。その1人1人のボタンの掛け違いでこういうストーリーが生まれて。 「この人が犯人だ」と最初に見せてから解いていくパターンではなくて、一緒に見ながら、考えながら、最後まで楽しめるドラマだと思います。 僕たちも撮影しながら、時々「ん?」と考えながら演じたくらいです。視聴者の方には、その空気感や緊張感を楽しんでいただきたいですし、ずっと見入ってしまうような作品に仕上がっていると思います。 ■シルビア・グラブ コメント ――今回の出演のお話が来たときの率直な感想は? びっくりしました。三谷さんからまず連絡が来て、「来月何やってる?」って(笑)。まさか、呼んでいただけるとは思っていなかったのですが、スケジュールの調整もついて、出演できて良かったです。 ――台本を読まれての感想。 三谷さんはコメディー色が強いものをよく書かれているのですが、初めに台本を読んだときは、実はコメディー色はあまり感じられなかったんです。 ちょっと珍しいなと思ったんですけれど、演じてみるとやっぱり面白い。個々のキャラクターもきちんと立っていて、全て分かった上で書かれている台本だと思いました。 ――今回の役を演じるに当たって。 今回のキャラクターがわりと抑えめな印象なので、舞台でのお芝居のような大きい表情や動きをしないように、かなり努力しました(笑)。普段の動きの大きい、明るいシルビアでやってはダメなんだろうなと思って。 多分、今まであまり見たことのないキャラクターにしたいんだろうなということを、メッセージとして受け取りました。 ――実際に演じられての感想。 すごく楽しんで演じさせていただきましたが、どう映っているのか?放送がすごく楽しみです。ドラマはシーンの順番に撮らないこともあるので、特に“凪子”というキャラクターについてはどう仕上がっているのだろうか、全く想像がつかないです。 萬斎さんとは初めての共演でしたが、お声に特徴があるので、その声の響きを間近で聞けたことはすごく勉強になりました。そしてあのすごいセリフ量のシーンに、その場にいられることもすごく幸せでした。 本堂家は、山本さんがムードメーカーになっていたので、和気あいあいと現場の空気が明るくなっていました。松坂さんもおだやかで。あまり映像の現場を経験していないので、初めは少し不安を感じましたが、最初から皆さんが話し掛けてくださったので、ちょっとホッとしました。舞台の稽古くらい濃厚な時間を過ごすことができました。 ――最後にメッセージをお願いします。 脚本も素晴らしいし、演者も素晴らしいし、監督の演出も素晴らしいので、演じていてすごく楽しかったですし、それは絶対伝わると思います。 また、ロケ場所の美しさやセットの世界観もいざなってくれたので、演じる側としてはすごく助かりました。サスペンスの中にもコメディーの要素があって、それを分かっているスタッフ・キャストの皆さんが作り上げている作品、絶対に面白いと思います。ぜひ、ご覧くださいね! ■市原隼人コメント ――今回の出演のお話が来たときの率直な感想は? 三谷さんの作品に出演させていただくのは初めてだったので、率直にうれしかったです。直接お会いしたことはなかったのですが、舞台や映画やドラマで演じる上で、いつも(存在を)感じている方だったので、わくわくしました。 イギリスのミステリーの女王と言われる、アガサ・クリスティの作品の世界観に入れるということもうれしかったです。 ――台本を読まれての感想。 今回の三谷さんの脚本は普段、人に見られたくない感情や繊細な影の部分を書かれているのですが、せりふが自然と体になじみ、気がつくと作品全体のテンポに乗せられ、読んでいくうちにどんどんスピードが上がっていく脚本から、すぐにその世界観に入り込むことができ、感激しております。 ――今回の役柄を演じるに当たって。 そもそも、日本人がアガサ・クリスティの作品をやるというのはどうなのかな?と初めは思ったんですけれども、日本に武士がいたように、イギリスにも騎士がいて。おのずと主君に仕える精神、家族に対する思いは似ているところがあると思うんです。 そう置き換え、その主君が母親であり、血のつながりを大切にしながらも「母親に見せていかなくてはいけない姿」というものを、自分の中で使い分けることに注意しました。 また、主水は母親の支配下にいる、外の世界を知らない人間で、どこかぎこちない部分があると思いますので、常に自然体ではない影のある男という人格を見せたいと思いました。母親が囲む陣地の中から出るべきか…己との葛藤やさまざまな環境での心の逡巡、繊細な感情から来る動きも意識しました。 ――実際に演じられての感想。 主水は、本当は殻を破って新たな自分の人生を切り開きたいけれども、その勇気が持てない。今、なかなか自分を出し切れない現代の人とも似ている気がしましたし、自分の心も投影しながら演じました。 ――撮影現場はいかがでしたか? 僕はもう夢の中にいるみたいに楽しくて(笑)。萬斎さんとは「陰陽師II」(2003年)で、鈴木京香さんとはデビューして間もないころにご一緒させていただき。またあらためて、こうして時を経てご一緒させていただくと、照れくさいような、はがゆいような…実際、すごくうれしかったです。 「役者の醍醐味(だいごみ)とは、また違う役でこうしてお会いすることなんだな」と感じさせていただきました。そして、「蒲田行進曲」(1982年)は、僕が1番好きな映画といっても過言ではない映画なので、その松坂さんの息子役を演じることができたことも、すごくうれしく、舞い上がる思いでした。 萬斎さんが作り上げる勝呂は、これはもう萬斎さんにしかできない、唯一無二のお芝居というか“表現”で、同じ時間を過ごさせていただき、とても勉強になりました。 実際の撮影は、緊張感のあるシーンが続いたのですが、その半面、カットがかかるとみんなで「こう演出しようか?」とか「こういう人間性や関係性にしていこうか?」など包み隠さず、壁を作らずに一緒に制作していける現場で、すごく居心地が良よかったです。 熊野古道でのロケも、とても気持ちが良くて。われわれが住む日本にまだこんなに素晴らしい所が残っているんだなと。ご覧いただく視聴者の皆さまにも、いろいろな日本のわびさび、古い伝統を残していく場所があるということを感じていただきたいです。 ――最後にメッセージをお願いします。 年齢や性別を選ばず、純粋に楽しめるエンターテインメントです。ぜひ、皆さまにもいろいろ推理や意見を交わしながら見ていただくことで、人と人との絆が、また深まることを願っております。 ■スペシャルドラマ「死との約束」あらすじ 「分からないのか、こうなったらもう殺すしかないんだっ」。名探偵・勝呂武尊(野村萬斎)は休暇で訪れていた熊野古道のホテルで、その場に似つかわしくない物騒な言葉を耳にする。事件はこの時、すでに動き始めていた。 翌日、朝食をとるためにホテルのラウンジに向かうと、そこで医学書を読んでいた医師の沙羅絹子(比嘉愛未)の姿を目にし、声を掛ける。沙羅は勝呂のことを新聞で見て知っていたため、2人はすぐに打ち解ける。そこに、本堂家の夫人(松坂慶子)、次男の主水(市原隼人)、長女の鏡子(堀田真由)、次女の絢奈(原菜乃華)がやって来る。 どこか異様な雰囲気を醸し出す夫人は、やってくるなりホテルのスタッフをどなりつけ、子どもたちにはあれこれと命令し始める。さらに遅れて、長男の礼一郎(山本耕史)、と妻の凪子(シルビア・グラブ)もやって来る。夫人の言動は、まるで一家の独裁者のようで、子どもたちは皆完全に彼女の支配下に置かれていた。 その風変わりな家族の様子に、勝呂はあっけにとられてしまう。一家と古くからの付き合いがあるという男・十文字幸太(坪倉由幸)によると、主である本堂氏が家族が一生遊んで暮らしていけるほどの十分なお金を残して死んだため、本堂家は家族全員で日本中を旅しているのだという。 沙羅から誘われて本宮大社を訪れ、散策をしていた勝呂は背後から声を掛けられる。振り返ると、代議士・上杉穂波(鈴木京香)と編集者の飛鳥ハナ(長野里美)だった。穂波は、自伝の執筆のために熊野を訪れたというが、どうやら勝呂とは旧知の仲らしい。穂波の前では今まで見せたこともないような顔を見せる勝呂。 その2日後、貸し切りバスで古道散策ツアーに向かった本堂一家と勝呂、沙羅、穂波、飛鳥。霊峰と言われる熊野には神秘的な山道が多く、景色もどこかミステリアスだ。そして、昔から天狗の目撃談も後を絶たない。各人が、思い思いの場所に分かれて時を過ごす一行。 そんな中、参道沿いのベンチで休んでいたはずの本堂夫人が、遺体となって発見される。地元の警察署長・川張大作(阿南健治)に事件解決を要請された勝呂は、早速捜査を始める。夫人は普段から心臓が弱かったというのだが、勝呂はその右腕に注射針の後を発見する。 病死なのか?、誰かに殺されたのか?、勝呂はホテルに到着した晩に、偶然耳にした言葉をふと思い出す。「分からないのか、こうなったらもう殺すしかないんだっ」。あの声は一体誰だったのか?、夫人の死と関係があるのだろうか? ぎくしゃくしていた家族の誰にも動機があり、全員に殺害するチャンスがあった。名探偵・勝呂史上、最もややこしい事件の推理が、今始まろうとしていた。